大阪大学大学院の大薗恵一教授、北畠康司助教らのグループは、ヒトiPS細胞にゲノム編集技術と染色体工学を組み合わせることで、ダウン症候群の新生児に頻発する血液細胞の増殖異常(TAM)のメカニズムを解明した。造血異常をもたらす遺伝子群が集まる領域を同定し、その中の主要な遺伝子群を明らかにしたもので、米国科学誌「Cell Reports」に掲載された。

 700人に1人という、小児遺伝疾患の中でも高い割合で起こるダウン症候群は、21番染色体の数が3本に増えること(トリソミー)で発症する。数百個以上の遺伝子が同時に量的変化を起こすため、病態を解明するために把握すべき遺伝子変化の組み合わせ数が膨大となり、解析は非常に困難だった。またダウン症候群にはさまざまな合併症があるが、そのうち新生児の10%以上に見られるTAMは、21番染色体の異常に加えてX染色体上のGATA1遺伝子の変異が関わるとされているが、それらがどのように作用しあって異常を引き起こすのか、どの遺伝子群が関与するのかについては不明だった。

 ダウン症候群の実験モデル作成は難しいとされていた中、本研究では、新生児と同じ遺伝子構造をもつ「臍帯血」からiPS細胞を作製、そのGATA1遺伝子にさまざまなゲノム編集を行って染色体・遺伝子型の組み合わせが異なる複数のiPS細胞を作製することで、TAMの病態再現に成功した。それらを調べた結果、TAMの原因となる遺伝子群が21番染色体上の特定の領域に集中していることが判明。この領域の作用で変異型GATA1の発現が進み、ここに21番染色体のトリソミーの作用が加わることでTAMの病態が現れることを突き止めた。

 本研究成果は、ダウン症候群におけるTAMの発症機序を明らかにしただけでなく、白血病へと至る発症メカニズムを知るきっかけにもなる。今後ダウン症の合併症についての診断・治療法の開発を大きく進めるものと期待されている。

大阪大学

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大学ジャーナルオンライン編集部

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