東京大学の研究グループは、全国の教育委員会を対象に実施したアンケート調査から、学校防災の認識・実践と学校区全体の災害リスクとの間に「空間的ミスマッチ」が生じていることを明らかにした。
学校管理下の児童74名と教職員10名が東日本大震災の津波により犠牲となり、学校防災体制の不備が問われた大川小学校津波訴訟判決等を契機に、近年、地域特性に応じた学校防災の重要性が高まっている。学校や地域の実情を踏まえた安全対策や関係機関との連携を掲げた国の「第3次学校安全の推進に関する計画」も2026年度に最終年度を迎えるなか、その具体的な実践の全国的な実態は不明確であった。
そこで本研究では、全国の教育委員会へのアンケート調査(回答266件)から、地域特性の把握と学校防災への反映状況を分析した。
調査の結果、教育委員会が学校防災で重視していたのは、浸水想定区域・土砂災害警戒区域等への該当(73.3%)、避難場所・避難所(71.1%)、学校の立地(67.7%)など、学校周辺のハザード情報が中心であった。一方、学校区内の防災資源(31.2%)、土地利用(19.2%)、人口構成(7.1%)など、学校区全体の特性への着目は限定的であり、学校中心の安全管理と地域全体の災害リスクとの間に「空間的ミスマッチ」の存在が示唆された。
また、地域特性の把握には地域防災計画(63.2%)や紙のハザードマップ(54.9%)が多く利用され、地理情報システム(GIS)(25.9%)は活用が十分でない実態も浮き彫りとなった。
加えて、避難確保計画の対象校を有する教育委員会でも、全ハザードについて避難訓練を実施している割合は48.3%にとどまり、制度整備が現場の実践に直結していない状況がうかがえたという。
本研究から、学校防災の課題は知識・技術の不足だけでなく、リスク認識や教育行政の体制にも関わる構造的課題であることが示された。
今後は、学校防災の視点を「学校」から「地域」に拡張し、通学圏全体を視野に入れたより実効性のあるリスク把握や学校安全の実践へと転換が必要だとしている。今後策定される「第4次学校安全の推進に関する計画」においても、本研究の知見を踏まえた検討が期待される。


