神戸大学の長野太輝助手、鎌田真司教授らの研究グループは老化ストレスを受けた細胞にビタミンB2を添加するとミトコンドリアのエネルギー産生機能が増強され、老化状態に至るのを防止する効果があることを明らかにした。

 老化は体を作っている細胞の老化が一因。老化細胞の蓄積を防ぐとがんや心血管疾患、アルツハイマー病、糖尿病などの加齢性疾患の改善や予防ができるが、副作用などの問題から医薬品の実用化には至っていない。低コストで安全な抗加齢薬の実現に向け、研究チームはビタミンB2(リボフラビン)を検討した。

 研究により、ヒト細胞に老化ストレスを与えてもすぐには老化せず、ビタミンB2を細胞内に取り込むタンパク質(SLC52A1)の産生量増加により細胞老化に抵抗性を示す現象を発見した。また、老化ストレスを受けた細胞は一時的にミトコンドリアを活性化するが、活性低下により老化状態に陥ることが分かった。そこで、培養液中のビタミンB2含有量を増やすとミトコンドリアの活性状態がそのまま維持され、老化抵抗性も持続。逆にエネルギー産生に働くミトコンドリアを抑制すると、エネルギー不足を検知した酵素AMPKが活性化し、タンパク質p53に細胞分裂を止める指令を出して老化状態に至った。ビタミンB2がミトコンドリアを活性化し、AMPKやp53の働きを抑えて細胞老化を抑制することが明らかになった。

 ビタミンB2は食事やサプリメントから容易に摂取でき、過剰摂取しても速やかに体外に排出される。ビタミンB2の細胞老化抑制効果を応用すれば、簡便・安全な加齢性疾患の治療薬としての発展が期待される。今後は治療薬の実用化に向け、動物実験でビタミンB2の抗老化効果の検証研究を進めるとしている。

論文情報:【Molecular Biology of the Cell】Riboflavin transporter SLC52A1, a target of p53, suppresses cellular senescence by activating mitochondrial complex II

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