中部大学、名古屋大学、岩手医科大学の研究グループは、便中のビタミンを「細胞内保持型(Type 1)」と「細胞外利用可能型(Type 2)」という新しい視点で分類・評価した結果、腸内細菌とビタミン利用の特徴的な関係を明らかにした。
私たちの腸内細菌叢(腸内マイクロバイオーム)では、さまざまな細菌が互いに代謝物を作って利用し合う「クロスフィーディング」が起きている。しかし、従来の便中代謝物解析では、代謝物の総量を評価することが一般的で、ビタミンなどの物質が細菌の細胞内に保持されているのか、細菌外に存在する(利用可能な状態にある)のかの区別が困難だった。
本研究では、同じ便試料を「破砕しない状態」と「強く破砕した状態」の二つに分けて解析する新しい手法を用いた。破砕前は細菌の外に存在するビタミンを測定する。破砕後は細菌の中に保持されていた成分も放出され、細胞内外の総量に近い値を測定できるため、この二つを比較することで、ビタミンを細胞内に保持されやすい「細胞内保持型(Type 1)」と細胞外に存在しやすい「細胞外利用可能型(Type 2)」に分類した。
健常者63名の便を解析した結果、アデノシルコバラミン、チアミンなどがType 1に分類された。これらは細菌の代謝に必要な補酵素として細胞内で利用され、外には蓄積しにくい可能性がある。一方、ビオチン、パントテン酸などはType 2に分類された。これらは細菌から放出され、他の細菌によって利用される共有資源となりやすい可能性がある。
さらに、細菌の種類や機能を調べるショットガンメタゲノム解析と組み合わせることで、アリスティペス属とビオチンの正の相関、ブラウティア属とチアミンの負の相関といった腸内細菌とビタミンの特徴的なつながりも明らかにした。アリスティペスはビオチンが豊富な腸内環境と関連し、ブラウティアはチアミンを積極的に利用する可能性があるとしている。
本研究の手法により、「誰が作り、誰が使っているか」という腸内細菌のビタミン共有ネットワークをより直接的に評価できる可能性がある。この成果は、疾患に関連する腸内環境の理解や、新しい腸内環境制御法の開発につながることが期待される。


