全国求人情報協会が2021~2023年大学卒業生※の就業状況を調べたところ、新卒入社から3年半で約3割が転職を経験したことが分かった。現在の仕事が自分に合うと感じる「適職意識」を持つ人ほど離職をとどまる傾向があり、適職意識の醸成が離職防止のカギになるとしている。

 調査はインターネット調査会社のマクロミルを通じて2024年8月に実施した。対象は新卒で民間企業に就職し、現在民間企業の正社員か、公務員の正規職員になっている人で、2021年卒540人、2022年卒548人、2023年卒560人の計1,648人から有効回答を得た。

 調査結果によると、現在の就業意識において「適職意識」を持つ人は48.8%、活躍実感がある人は39.8%、キャリア選択に納得している人は40.9%、主体的にキャリア形成ができている人は35.0%となっている。また、初任配属に関する企業とのコミュニケーションが重要で、希望通りの配属先であった人は「自分に合っている」と感じる割合が高いことが示された。希望通りでなかった場合でも、配属理由の説明や適性の反映があれば同様の感覚を持つ人が多い。

 一方、転職経験者は全体で22.3%だったが、新卒入社後3年半となる2021年卒業生に限れば、30.7%が転職を経験した。全体の39.7%が転職の意向を持ち、10.0%が実際に転職活動をしているほか、29.8%が転職を検討している。

 適職意識と転職の関係を見ると、適職意識を持つ人のうち転職意向があるのが31.8%だったのに対し、どちらともいえない人は39.0%、適職意識を持たない人は60.2%に達し、適職意識の有無が離職に影響を与えていることがうかがえた。

 東京大学名誉教授の佐藤博樹理事は調査分析の中で「新卒入社の社員が定着するかどうかに適職意識が影響している。インターンシップなど就業体験機会の提供、内定者同士の交流や疑問への丁寧な対応、配属理由の説明や仮配属の機会を設けることで、初任配属先が自分に合っていると感じることが重要」とまとめている。

※調査対象である2021年~2023年大学卒業者の就職活動は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を大きく受けている。2020年4月の緊急事態宣言以降、2021年9月までの間に計4度の緊急事態宣言(東京都)が出されたことで、2021年卒業者は4年生、2022年卒業者は3年生以降、2023年卒業者は2年生以降の活動段階で移動の制限など様々な制約を受けた。詳しい調査内容はニュースリリースを参照のこと。

参考:【全国求人情報協会】新卒等若年雇用部会ニュースリリース 入社2年~4年目社会人の就業意識の実態調査(2024年度)(PDF)

大学ジャーナルオンライン編集部

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