畿央大学大学院の若林汰氏(博士後期課程)と岡田洋平教授らは、公開データにより高齢者の重心動揺データを解析。従来の線形指標に加えて、ゆらぎの複雑性や規則性を示す非線形指標を算出し、これらの指標と転倒歴との関連を検討した。
高齢者の転倒は、けがや活動量の低下、生活の自立度の低下につながる。重心動揺計を用いた従来の評価では、動揺の大きさや速度などの量的指標が主に用いられてきたが、姿勢制御の変化は「揺れの大きさ」のみでは十分に捉えられない可能性がある。
研究グループは、公開されている高齢者(60歳以上)の重心動揺データを用いて、過去12か月間の転倒歴に基づき、転倒歴あり群と転倒歴なし群に分類・比較した。
解析では、従来の線形指標に加えて、姿勢動揺の時間的構造や複雑性を捉える非線形指標を算出した。また、年齢や身体特性、疾患、服薬状況などの背景因子の影響を調整(傾向スコアマッチング)して解析した。その結果、単一指標の比較では、転倒歴の有無による有意な差は認めなかった。
一方、探索的な多変量解析では、姿勢動揺の時間的構造や複数の時間スケールに関わる非線形指標がモデル出力に大きく関与する傾向が示された。これにより、転倒歴に関連する情報が、単一の動揺量指標として明確に現れるのではなく、複数の指標を組み合わせた姿勢制御の「質的な特徴」として反映される可能性が示された。
今回の研究により、高齢者の転倒歴に関連する姿勢制御の特徴に関して、従来の量的指標(動揺速度、動揺面積など)だけでなく、「ゆらぎの質」(姿勢動揺の複雑性や規則性)に着目する重要性が示されたとしている。
