甲南大学大学院の久原篤教授らの研究チームは、銅イオンによる細胞死『カプロトーシス』が動物の低温死に関与することを線虫の解析から明らかにした。

 日本では近年、「低温による死者数」が「熱中症による死者数」を上回る年が続いているが、「低温が細胞や体を死に至らせる」仕組みの解明は十分ではない。一方、細胞が自ら機能を停止し死に至る「細胞死」の研究は進んでいる。細胞内への銅イオン蓄積によって生じる「カプロトーシス(銅誘導性細胞死)」は近年発見された細胞死だが、研究チームはこれが低温死に関与するのではないかと考え、モデル生物「線虫C.エレガンス」を用い研究を進めた。

 研究チームは、リソソーム(不要物質の分解・再利用の役割を持つ細胞内小器官)における銅輸送に関与するタンパク質SLCR-46.1に変異を持つ線虫に着目。この変異体(slcr-46.1)では、低温下で咽頭筋(食物を送り込む筋肉組織)に銅イオンが過剰に蓄積し、低温死することが分かった。

 さらに、slcr-46.1変異体でカプロトーシス関連遺伝子の機能を抑制すると、低温下での生存率が回復した。また、銅イオンをキレートする(取り除く)ことで変異体の低温死が抑制され、野生株においてもカプロトーシスを阻害すると低温死が抑制された。さらに、哺乳類細胞を通常より低温条件で培養すると、カプロトーシス関連遺伝子の発現量が増加することも確認された。

 今回の研究は、生体内での役割が未解明であったカプロトーシスが、動物の低温死に関与することを初めて示した。今後、ヒトを含む動物の低温適応機構の理解を深め、細胞や臓器の低温保存技術や細胞死制御などの研究の発展につながることが期待されるとしている。

論文情報:【Nature Communications】Cuproptosis inducers mediate cold lethality via SLCR-46.1 in C. elegans

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