千葉商科大学サービス創造学部では、毎年「サービス創造フェスティバル」を開催している。卒業生や企業経営者・実務家による講演に加え、学生が取り組んだプロジェクトなどの成果を発表する場も。サービス創造フェスティバルは教員や学生たちにどのような効果をもたらしているのだろうか。今回は、学部の正課授業「プロジェクト実践」の一つである「スポーツビジネス・プロジェクト」の担当教員である横山真弘准教授と、3年生の木村陽菜さん、坂本寬康さんに伺った。
サービス創造フェスティバル2025 当日の様子
学生の学びをアウトプットする場に
2017年度より始まったサービス創造フェスティバルは、学生たちの学びを深めるためのイベント。サービス創造学部の特色でもあるプロジェクト活動やゼミナール、1年生の「サービス創造入門」の成果を発表する。なお、学部内で「プロジェクト活動」と呼んでいる実践的な学びは、正課授業「プロジェクト実践」として展開されている。
フェスティバルは、開始当初はプロジェクトのポスター発表と基調講演のみで構成されていた。その後、ゼミナールのポスター発表を加え、さらに卒業生講演を実施するなど、段階的に内容の充実を図ってきた。近年では1年生による発表も加わり、学びの広がりと成長の過程を示す場へと発展している。
また、2年前からは入学予定者およびその保護者を招くようになり、フェスティバルは学生の学びや成長を広く社会に伝える機会として、さらに拡大している。
「サービス創造フェスティバルは学生たちの活動をアウトプットする場として、とても価値があります。各プロジェクトやゼミナールの取り組みを知る機会になりますし、難しかったことやうまくいったことなどを情報共有することで、学びがより深まっていくからです。」(横山先生)
学生たちのプロジェクト活動において、日々積み重ねてきた取り組みを表彰する場もある。その年の最も優れたプロジェクト活動に贈られる「学生プロジェクト大賞」、学部生や保護者、企業関係者が選出する「MIP賞」、そして入学予定者が魅力的だと感じたプロジェクトを選出する「MAP賞」などだ。2025年度は、学食を舞台に地域貢献などに取り組む「THE UD・プロジェクト」が学生プロジェクト大賞を受賞した。また、MAP賞には、千葉県を拠点にしたスポーツチームと連携してイベント企画や運営、広報活動などを行う「スポーツビジネス・プロジェクト」が選ばれた。
千葉ジェッツの千葉商科大学冠協賛試合にてマイクパフォーマンスをする坂本さん(左)・木村さん(右)
スポーツチームと連携して試合を盛り上げる!スポーツビジネス・プロジェクト
サービス創造学部では、2025年度は9つのプロジェクト活動を展開している。例えば、学生と教職員を対象にパーティの企画・運営を行い交流の場と非日常的な空間の創出をめざす「パーティ・プロジェクト」、フリーペーパーを制作し学生目線で地域の魅力を発信する「メディア・プロジェクト」、ブライダル業界が抱える課題を踏まえ未来志向のブライダルサービスを企画する「ブライダルサービス・プロジェクト」など内容は幅広い。なかでも今回は、「スポーツビジネス・プロジェクト」に注目してみよう。
スポーツビジネス・プロジェクトが連携しているのは全部で4球団。プロ野球チーム「千葉ロッテマリーンズ」、プロバスケットボールチーム「千葉ジェッツ」、プロサッカーチーム「ジェフユナイテッド市原・千葉」、そして社会人アメリカンフットボールチームの「オービックシーガルズ」だ。3年生の木村さんは全学的な取り組みである千葉ロッテマリーンズの千葉商科大学冠協賛試合で学生統括を担当し、坂本さんはオービックシーガルズの試合集客に向けた企画で副リーダーを担当した。
スポーツビジネス・プロジェクトを知り、千葉商科大学サービス創造学部への入学を決めたという2人。スポーツを見たりプレーしたりするだけでなく、試合を創り上げる側の活動にも興味を抱いたそうだ。それぞれが担当している企画を成功させるため、周囲と協力しながら準備を進めていった。
木村さんは、千葉ロッテマリーンズとの冠協賛試合における統括として、球団との調整や当日の運営設計など、企画全体を横断的に管理し、関係者をつなぐハブとしてプロジェクトを取りまとめた。
その中でも今年特に力を注いだのが、ファーストピッチセレモニーにおける投球者の選出方法の見直しと、デザイン面での刷新である。「2025年度らしさを出したい」という思いから、コンセプトロゴや配布物の制作については総合政策学部のメディア系ゼミナールに協力を依頼。従来のやり方を踏襲するのではなく、企画全体を俯瞰しながら新たな価値を加えることに挑戦した。
「どう今年の色を出すかを考えた結果、デザインを専門とする総合政策学部のゼミナールに配布物作成を依頼しました。おかげでレベルが格段に上がり、来場者の目から見てもきれいなものが仕上がったと思います。大学が求めるもの、球団が求めるもの、そして自分がやりたいことのギャップが出ないよう、球団職員の方や、もうひとりの学生統括とたくさん話し合いました。」(木村さん)
「冠協賛試合は全学的な取り組みなので、熱量の異なる方々にも興味を抱かせて周囲を巻き込んでいくことが重要です。大変だったと思いますが、木村さんの明るいキャラクターもあり、うまく周りを巻き込んでいました。」(横山先生)
坂本さんはオービックシーガルズの夏の開幕戦に向けて、集客のための広報やアメリカンフットボールの認知拡大に取り組んだ。
「アメリカンフットボールは日本ではまだマイナーなスポーツだと思います。自分たちの力で競技を知ってもらい、観客を集めることで、アメリカンフットボールをもっと盛り上げていきたいと思い、この企画に参加しました。」(坂本さん)
まず力を入れたのはアメリカンフットボールに触れる機会を創ること。地域イベントへのブース出展や体験会の開催を通じて、競技を観るだけでなく体験する場を広げていった。さらに、オービックシーガルズ主催の「スポーツで遊べる日」の中で、スポーツビジネス・プロジェクトが企画を担い、段階的に競技へ親しめる機会を創出した。また、試合観戦につなげるため、チラシのポスティングや祭りでのビラ配布、朝のラジオ体操への参加など、地域に足を運ぶ広報活動にも学生主体で取り組んだという。さらに試合当日は、会場の近くに子どもたちに遊んでもらえる縁日のような場を用意。遊んだあとはそのまま試合観戦に行きたくなるよう、動線をつくり上げた。
企画を進めるうえで苦労したのは、メンバーのモチベーションを維持することだったそうだ。
「アメリカンフットボールはサッカーや野球、バスケに比べてまだ認知度が高いとはいえず、さらに活動が夏季休業中だったこともあり、メンバーのモチベーションを維持するのが難しかったです。だからこそ自分から動き、指示をすることに加えて、メンバーに寄り添いながらチームを支えることを意識しました。」(坂本さん)
スポーツビジネス・プロジェクトの学期最後の授業の様子
学問・企業・活動で循環する学び
学生たちは、「なぜ人は試合会場に足を運ぶのか」「どうすれば関心を行動に変えられるのか」といった問いを探究し続けながら、授業で得た知識をもとに課題を整理し、現場での実践を通して理解を確かなものへと深めていった。
こうしたプロジェクト活動を支えているのが、日々のゼミナールでの学びだ。
石井泰幸学部長のゼミナールに所属する木村さんは、経営組織の体系や簿記などを学ぶ中で、ドラッカーの経営理論に触れたという。
「ゼミナールで扱ったドラッカーの経営理論を、スポーツビジネス・プロジェクトで実践することができました。」と振り返る。
一方、松本大吾教授のゼミナールに所属する坂本さんは、マーケティング・コミュニケーションを専門に、他大学の学生との議論や発表、企業課題への提案など実践的な学びを重ねている。
「どういう広告なら消費者は見てくれるのか。興味を行動に移すにはどうすればいいのか。根本的な課題を見つけ、課題に対して論理的に組み立てていくといったゼミナールで得た視点が、プロジェクト活動にも大いに役立ちました。」と語る。
教室での理論と現場での挑戦の往復が、学生たちの学びをより確かなものへと育てている。
プロジェクト活動の成果はサービス創造フェスティバルのポスターセッションでも発信した。当日は常に人だかりができるほど大盛況で、発表を聞いた人のなかにはスポーツビジネス・プロジェクトが関わった試合の来場者もいたそうだ。多くの方に愛されるプロジェクト活動に関われたことを、木村さんも坂本さんも改めて実感していた。
学部の授業やプロジェクト活動、そしてサービス創造フェスティバルなど、学内外でインプットとアウトプットをくり返しながら成長していく学生たち。将来につながる学びを得られたと、手応えを感じている。
「主体性や成長、失敗を恐れず挑戦することが自分のモットーになりました。現在は就職活動中ですが、自分がやりたいことに挑戦し、成長できる環境を軸にしたいと考えています。もともと大手企業志望でしたが、ベンチャー企業で自分の力を試してみたいと、プロジェクトをきっかけに進路も変わりました。」(木村さん)
「何事にも挑戦することの重要さや、『なぜ?』を突き詰めることの大切さを学びました。失敗から得た学びを咀嚼し、後輩に伝えていくことがプロジェクト全体の成長にもつながると思います。また、『なぜ取り組むのか』『なぜそう思ったのか』を問い続けることで、お客さまに何をどう届ければいいのかがわかりました。学びを生かして、将来は自分が成長できるベンチャー志向の会社で働きたいです。」(坂本さん)
「サービス創造学部では『学問から学ぶ』『企業から学ぶ』『活動から学ぶ』を循環させるカリキュラムを実践しています。授業で学んだ知識を現場で使ってみると、うまくいくこともいかないことも出てくるでしょう。こうした経験から得た学びは、おふたりのように就職活動やその後の進路にも影響を与えてくれると思います。坂本さんや木村さんも、いつかサービス創造フェスティバルで卒業生講演をしてくれたら嬉しいですね。卒業生と在学生の学びが循環していくことは教員としても大きな喜びです。」(横山先生)
