いったいどのような問題が出題されるのか

2021年3月24日、大学入試センターが「情報Ⅰ」のサンプル問題を公開した(これに先立ち2020年11月に「試作問題(検討用イメージ)」というものも出ている)。
プログラミングの問題も出ており、私の周りでは「難しい!」という感想の教員が多いが、全国平均を5 ~ 6割程度に設定する大学入試としてはこれくらいのレベルが妥当ではないかとも思う。まだご覧になっていない方がいれば、大学入試センターのWebページで公開されているのでぜひ一度見ていただきたい。
大学入試センターのWebページ

このことは報道でも大きく取り上げられた。その論調はおしなべて、「小中学校に加えて、高等学校でもプログラミング必修化!」といったものだったから、さしあたって、「情報科でプログラミングを学ぶ!」とか「情報科が大学入試に入る!」といったイメージを日本中に広めることにはある程度成功したように感じられる。
しかしここで大きな疑問が生じる。それは教科「情報」の内容がこれほどまでに「プログラミング重視」「コンピュータ中心」になってよいのかという疑問である。この春、一斉に各学校に配られた新しい検定教科書の見本本にも「プログラミング」や「コンピュータ」といった文字が溢れかえっており、内容が一気に「科学」寄りに舵を切った印象である。この極端な動きには違和感があると言わざるを得ない。
この違和感についてもう少し詳しく述べたい。
そもそも、教科「情報」の目標は【】の通りである。つまり、教科「情報」では、まず何よりも「情報とは何か」を学ぶことが重要なのではないか。教科「情報」はプログラミングやコンピュータだけを学ぶ教科ではないのである。上で述べた報道のような偏った認識のままでは、「情報=コンピュータ」だと誤解する高校生がたくさん生まれてしまう。これはなんとも心もとない。
「情報」の概念というものは、コンピュータだけにとどまらないのは明らかである。例えば、日常生活でも「この分厚い本から得られた情報はほとんどなかった」というようなことが起こり得るが、この場合の「情報」は、ビットやバイトといった「データ量」といったいどのような関係があるのか。こういったことをきちんと理解するのが教科「情報」なのではないか。
ここで、「情報とは何か」という問いに正面から挑んでいる研究者とその学問の内容について紹介したい。
情報学者であり、東大名誉教授の西垣通氏は「基礎情報学」という学問を提唱している。基礎情報学は、まさに「情報」についての学問であり、「情報とは何か」が明確に定義される。基礎情報学において、情報とは、生物とっての「意味作用を起こすもの」と定義され、「生命情報」、「社会情報」、「機械情報」の3種類に分類される。
基礎情報学では、情報のもつ「意味」に着目する。ここでいう「意味」とは、別の言い方では「価値」である。すなわち、情報は、「誰(どの生命)にとって意味(価値)があるのか」が重要である。基礎情報学において、「情報」とは、生命と密接に関連し合った、生命とは切り離せない存在として考えられるのである。

 

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大学ジャーナルオンライン編集部

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