ロボット工学・心理学との違い、そして文化情報学部らしさ

 同じロボットを研究対象としていても、飯尾先生のアプローチは、いわゆるロボット工学とは重心が異なる。「ロボット工学は、制御の精密さや理論としての美しさに重きを置くことが多い。僕の場合は、多少精度が粗くても、人がそれを使いやすいか、関わりたいと思うかのほうが重要なんです」。

 心理学との違いについても、「心理学は人間の本質やモデル化を突き詰めていく学問ですが、僕の場合はそれに加えて、技術をどう設計すれば人が使いたくなるか、という視点が入ってくる。設計・理解・現場実証、そして未来にどう活かすか——このサイクル全体を扱うのが、僕の研究のスタイルです」と説明する。

 こうした学際性こそ、文化情報学部らしさだと飯尾先生は語る。「文化とは、遺伝的にではなく後天的に獲得したもの全般だと僕は理解しています。技術も言語も、そこに含まれる。ロボットも同じで、単なる技術ではなく、それ自体が新しい文化を生み出しうる存在なんです。人間同士のやり取りによって形づくられてきた文化のなかに、ロボットという人工的な存在が入ってくることで、これまでの文化がガラッと変わっていく可能性がある。それを見届けたいし、デザインしていきたいと思っています」。

技術と人間理解の両方に、好奇心を持てる学生へ

 飯尾先生の研究室では、理化学研究所や、ATR(国際電気通信基礎技術研究所)などの研究施設とも共同研究を行っている。散歩のパートナーのように人間と並んで歩くロボットの目線の研究や、企業のオフィスで社員同士をつなぐデジタルサイネージ連動ロボットでコミュニティをつなぐ取り組み、人間の表情を模倣するロボットと対した際の人間の共感心理変化など、幅広いテーマに取り組む学生が集う。「ロボットに興味がなくてもいいんです。人工物を使って人間の振る舞いを引き出す、人間を拡張する、社会をより良くする——そうしたキーワードに惹かれる人は、この分野に向いていると思います」。

 ロボットという新しい人工物を通じて、人間そのものへの理解を深め、人と人との関係をより豊かにする——飯尾先生の研究は、工学的な技術力と、人文・社会科学的な洞察力の両輪があってこそ成り立つ、文化情報学部ならではの学びの好例と言えるだろう。技術の枠組みのなかで基礎を身につけ、そのうえで新しい価値を創造する力を養う。ロボットを通じた「良心あふれる世界の実現」を目指す飯尾先生の探究は、これからも続いていく。

同志社大学 文化情報学部 ソーシャルロボティクス研究室

飯尾 尊優 准教授

2012年同志社大学大学院工学研究科博士課程情報工学専攻修了。博士(工学)。株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)知能ロボティクス研究所研究員、大阪大学大学院基礎工学研究科助教、筑波大学システム情報系助教などを経て、2021年から現職。内閣府「ムーンショット型研究開発制度」目標3「2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現」の研究プロジェクトに、主たる共同研究者として参画している。

 

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同志社大学

「一国の良心」を受け継ぐ。志を一つにして次代へ向けて邁進

1875年、新島襄によって同志社大学の前身である同志社英学校が創立。「キリスト教主義」「自由主義」「国際主義」を教育理念とする良心教育を実践してきました。真理を愛し人情を篤くする徳、個性を尊重し一人一人を大切にする精神、広い視野をもって世界を捉える力、これらを[…]

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