東京大学の佐々木裕次教授、大阪大学の後藤祐児教授らの研究グループは世界で初めて溶液中のイオンが結晶化する瞬間を観察することに成功しました。従来の予想に反してイオンが激しい運動をしていることが分かりました。

 液体に溶けた物質から結晶などの固体が現れる析出現象は様々な工業分野に関わっています。また、病気の中には体内の分子が固体になってしまう異常が原因となるものも多く知られています。そのため析出現象の詳細なメカニズムを解明することは新しい材料の開発や、病気の予防などにつながる可能性を秘めています。しかしながら非常に小さな分子やイオンの動きを溶液中で詳細に観察することは難しく、これまで析出の瞬間を観察することはできませんでした。

 今回は佐々木教授が1998年に開発したX線1分子追跡法という手法で酢酸ナトリウムの結晶化の瞬間の観測を試みたところ、飽和量を超える溶液中で析出に向けて酢酸ナトリウムが集まっていく様子を観察することができました。これまで結晶化の瞬間はイオンはあまり動いていないと考えられてきましたが、予想に反して極めて速く動く塊が存在することが分かったのです。この運動は結晶形成に深くかかわっているものと考えられます。

 今回新しく発見された運動の仕組みを解明することができれば、固体の析出をコントロールしたり、その状態を利用した新しい材料の開発につながることが期待できます。また医療の観点からは結石の形成やアルツハイマー病の原因とも言われる脳内でのタンパク質の析出を防ぐことができるようになるかもしれません。今後はまだ発見されたばかりの新現象の解明に向けて研究が進められるでしょう。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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