東北大学大学院の田中重人准教授は、高校保健副教材 (文部科学省作成) の「妊娠のしやすさと年齢グラフ」を調べた結果、原典の論文ではなく別の論文からの曾孫引きであることがわかったため、学校教材に採用するのは不適切と指摘しています。

 「妊娠のしやすさと年齢グラフ」は、22歳を妊娠のしやすさのピークとし以降急激に下降しているグラフで、2015年の高校保健副教材「健康な生活を送るために」改訂版に掲載されました。しかし、当初掲載されたグラフは出典表示が不正確で、曲線も改竄されていたことが判明したため、文部科学省は別のグラフに差し替えました。その後、差し替えたグラフに対しても、不適切だと指摘され、日本生殖医学会は『このグラフは長年用いられてきたグラフで適切である』とするコメントを出しましたが、原典資料に基づいた議論は行われず、経緯は不明なままでした。

「妊娠のしやすさと年齢グラフ」の経緯を明らかにするため田中准教授は、グラフの元データである1978年の人口学論文とそれを引用した文献を調べました。その結果、1978年の論文データは、20代前半までに結婚した早婚女性に限定しての推定であり、時間経過による性行動変化を混同している可能性が高いことがわかりました。この問題点はこれまで専門家によって指摘されていましたが再検証は行われてきませんでした。さらに教材で使用されたグラフは、この原典ではなく、それを加工して批判的に引用した1989年の論文のグラフをさらに写した1998年の論文からの曾孫引きによるもので、コピーされるたびに曲線が変形し、データ上の根拠がない“22 歳がピーク”という印象を作り出していることもわかりました。

 田中准教授は、問題のあるデータを無批判に利用し、不正確な引用を繰り返してきたこと、そして原典資料と研究史のチェックを怠ってきたこの研究分野における根深い問題があることを示唆しています。

東北大学
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大学ジャーナルオンライン編集部

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