大阪大学微生物病研究所の岡本徹助教と松浦善治教授らは、日本の肝がんの7割を占めるウイルス性肝がんの主因である「C型肝炎ウイルス」の増殖を抑え、肝病態を改善するメカニズムを発見した。シグナルペプチドペプチダーゼ(SPP)と呼ばれる酵素を阻害すると、ウイルスの粒子の産生が減少し、肝病態が改善することをマウスモデルで確認した。C型肝炎の新しい治療薬の開発に役立つ。

 アルツハイマー病の治療薬として開発中のガンマセクレターゼ阻害剤の中から、SPPを阻害する化合物を見つけた。これらの薬剤や遺伝子編集技術を応用した結果、SPPで切断されない未成熟なコアたんぱく質は、TRC8という酵素によって認識され、速やかに分解されることを発見した。この分解経路を抑制すると、小胞体ストレスによって細胞障害が強く誘導されることから、これは新しいたんぱく質の品質管理機構であると考えられる。また、SPPの活性を阻害すると、C型肝炎ウイルスの粒子産生が著しく減少し、インスリン抵抗性や脂肪肝などの肝病態が改善することをマウスで確認した。

 全世界では約2億人がC型肝炎ウイルスに感染しており、このウイルスに感染すると、脂肪肝や肝線維化、肝がんを発症する。最近、ウイルスの複製酵素を標的とした非常に有効な薬剤が開発され、C型肝炎ウイルスを駆除できるようになったが、耐性ウイルスの出現や、ウイルス排除後の肝がんの発症など多くの問題が残されている。C型肝炎ウイルス粒子を形成するコアたんぱく質が、感染した宿主細胞のSPPで切断されることが、ウイルス粒子の形成や肝病態の発症に重要であることが知られていたが、詳細は明らかになっていなかった。

大阪大学

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大学ジャーナルオンライン編集部

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