東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の下川宏明教授の研究グループは、血管内皮細胞の酵素の一つであるAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)が、肺高血圧症の発症を抑制していること、また、糖尿病治療薬のメトホルミンが肺高血圧症治療に有用となる可能性があることを世界で初めて明らかにしたと発表した。

 肺の血管内腔が異常に狭くなり血液の流れが悪くなると、肺動脈内の血圧が異常に上昇する。これが肺高血圧症で、狭くなった肺動脈に血液を流すように心臓(右心室)が無理をするために右心不全を生じる。平均生存期間は約3年(未治療の成人の場合)とされ、薬剤の根治は困難で場合により胚移植が適応となる。原因不明の致死的疾患であり、指定難病に認定されている。

 本研究では、肺高血圧症患者由来の血清が肺動脈血管内皮のAMPKを直接抑制することを明らかにした。また、AMPKが抑制されることで、血管内皮機能が低下、肺動脈血管平滑筋細胞の増殖が促進されるが、その結果、肺動脈が肥厚し肺高血圧が重症化することが判明した。マウスを用いた研究では、血管内皮選択的にAMPKを欠損させると、血管内皮機能低下・血管平滑筋細胞増殖・炎症細胞浸潤を認め、著しい肺高血圧症悪化を示したという。

 さらに、糖尿病治療薬の一つであるメトホルミンをマウスに投与したところ、肺動脈血管内皮のAMPKが活性化し、顕著な肺高血圧治療効果を示した。メトホルミンは、現在、糖尿病の診療において一般的に投与されている薬剤であり、同薬剤が肺高血圧症の治療にも有用である可能性が期待される。

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