新潟大学大学院医歯学総合研究科分子遺伝学の小松雅明教授、斎藤哲也特任助教らは、肝細胞がんが増殖する仕組みを解明し、その仕組みを打ち消す新規化合物により肝細胞がんの悪性化を抑制することに成功したと発表した。本成果は東京大学、慶應義塾大学との共同研究で得られたものとなる。

 肝細胞がんは肝臓組織から発生する悪性腫瘍で、日本人のがん死因では3位だ。長期の飲酒、B型やC型肝炎ウイルスの持続感染などにより発症するとされる。また、症状が乏しいため発見された時には進行しているケースが多く再発率も高い。現在でも十分な治療は難しいとされている。

 肝細胞がん患者のがん細胞には、マロリー小体と呼ばれる構造体が大量に存在することが知られているが、その機能は不明だった。今回、この構造体の主成分であるタンパク質p62/SQSTM1が、肝細胞がんの増殖や抗がん剤に対する耐性を増強する仕組みがあることを見出した。p62/SQSTM1は、転写因子であるタンパク質NRF2を分解へ導くKEAP1というタンパク質と結合し、恒常的にNRF2を活性化する。このNRF2の活性化により肝細胞がんの増殖および抗がん剤耐性が引き起こされるという。

 さらに、新規化合物がp62/SQSTM1によるNRF2活性化の仕組みを打ち消し、肝細胞がん細胞の増殖を抑制するとともに既存の抗がん剤の薬効を高めることを確認した。この新規化合物はK67と呼ばれ、東京大学創薬機構との共同研究により見出されたものだ。

 研究チームは現在、臨床応用を目指しK67の薬効を高めるK67誘導体の開発、NRF2自体を標的にした薬剤開発を進めている。これらの薬剤は肝細胞がん治療薬として期待される。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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