東北大学大学院工学研究科の小川由希子博士後期課程学生、須藤祐司准教授、安藤大輔助教、小池淳一教授の研究グループが、形状記憶特性を示すマグネシウム(Mg)合金の開発に成功。その比重は従来の形状記憶合金と比べ約1/3という。7月22日付けの米国科学誌「Science」に掲載された。

 形状記憶合金とは、一定温度で変形しても元に戻ったり、変形後一定の温度まで加熱することで元に戻るといった特徴をもつもの。眼鏡のフレームなど身近なものから医療製品まで幅広く使われており、近年では「1kg軽くなるとコストを100万円減らせる」といわれるロケットや宇宙船などの振動吸収部品などとしても注目されている。

 これまで研究グループは、マグネシウム(Mg)にスカンジウム(Sc)を加えたMg-Sc合金が従来Mg合金の結晶構造である最密六方構造(hcp)に加え、体心立法構造(bcc)という別の構造も取るという点に着目、その性質を利用してMg合金の高機能化を研究してきた。

 研究の過程で、Mg-Sc合金が従来のhcp結晶構造をもったMg合金と比べ高強度・高延性のバランスに優れるということを見出しており、今回、bcc型Mg-Sc合金がマルテンサイト変態という相変態を起こし、形状記憶特性を発現することを発見。Mg-20 at% Sc 合金の場合、マイナス150 ˚Cという低温下において4%以上の超弾性歪みを示すことを確認した。これまでさまざまな合金系において形状記憶特性が見出されてきたが、マグネシウムなど軽量元素を主とする超軽量合金についての報告は初だという。

 従来合金に比べて約70%も軽く、高強度・高延性も優れた形状記憶Mg合金は、強度を損なうことなく部材の軽量化が可能であり、航空・宇宙産業、特に低温下で使用される宇宙用材料としての応用が大いに期待される。また、マグネシウムは生体分解性を持つため、医療分野において生体分解性超弾性マグネシウムステントといった新規高機能ステントの適用も見込まれる。

 今後は実用化に向け、合金組成の最適化による動作温度の上昇や、この合金の生体適合性などの評価をすすめる予定という。

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