香川大学医学部山本融教授らの研究グループは、神経細胞同士の接続(シナプス)が作られ過ぎないように調節するしくみを解明。加えてこのしくみが正常に働かなくなると脳の神経細胞が過度に興奮し、自閉症スペクトラム障害(ASD)に類似した社会性行動の変化を引き起こすことを明らかにし、研究結果を米科学誌「ニューロン」に発表した。

 自閉症スペクトラム障害(ASD)は成人有病率1%ともいわれ、成人してから社会的な困難を抱えて受診、診断されることもあり、病態解明・治療法の開発が強く求められている。

 脳内では、接続(シナプス)を介して神経細胞を興奮させる「興奮性入力」と興奮を静める「抑制性入力」2つの指令が送られ、通常そのバランスは適正に保たれている。ASDにおいては脳神経の過剰な興奮が起こすてんかんを併発する例が多いことから、このバランスの偏りが脳の神経細胞の興奮の行き過ぎを引き起こし、ASDの一因になるのではないかと推測されている。
過剰に興奮してしまう原因として、興奮性入力を行う「興奮性シナプス」が作られ過ぎてしまうことが挙げられるが、脳内でシナプスの生成をコントロールしている仕組みについては不明だった。

 研究グループは脳の神経回路網が形成される過程を研究する中で、シナプスを作る際に重要な特定の物質と結合してその働きを阻害し、シナプスが作られ過ぎないよう働く「MDGA2」という膜タンパク質を発見。MDGA2の量を減らすよう遺伝子改変を行ったマウスで解析したところ、興奮性シナプスが過剰に形成され、脳内の神経細胞が過度に興奮することを見出した。

 続けてこのマウスの行動を観察したところ、同じ行動を繰り返す、他のマウスとコミュニケーションを持たず関心も薄いなど、ASDに類似した行動が認められたという。これらの結果からMDGA2は興奮性シナプスを制御することで脳の神経細胞の興奮の行き過ぎを抑えていることが示唆される。

 ASDの病態や発症要因は一つではないが、本研究により病態の一端が明らかになったことでさらなる病態解明や治療方針に役立つ。また、同様のバランスの偏りは統合失調症などの精神神経疾患でも確認されており、今後はこうした疾患の理解や治療にも応用が期待される。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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