京都大学、広島大学などの研究グループは、「動物園まるごとiPS細胞化プロジェクト」の一環として、大型類人猿であるボノボとチンパンジー、小型類人猿であるテナガザルの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製し、さらに四肢骨格の起源(脚腕の元)である肢芽中胚葉細胞への分化誘導にも成功した。

 ボノボとチンパンジーは、ヒトに最も近縁な類人猿として知られている。一方、テナガザルは、ヒトとの共通祖先から最も古い時期に分岐したと考えられており、ヒトに最も遠縁な類人猿に位置付けられる。これらの類人猿とヒトを比較することは、霊長類の進化の過程を解明する上で重要である。

 本研究では、動物園や研究施設から提供された組織試料から細胞を培養し、ボノボ、チンパンジー、テナガザルのiPS細胞の作製に成功した。これらに加え、ヒト、ゴリラ、オランウータン、アカゲザル、カニクイザルを含む複数種の霊長類iPS細胞について遺伝子発現を比較した結果、サル類、小型類人猿、大型類人猿、ヒトの順に分岐する霊長類の系統進化を反映したパターンに分類できることが明らかとなった。

 さらに、作製したボノボ、チンパンジー、テナガザルiPS細胞から、四肢骨格の起源である肢芽中胚葉細胞を作出することにも世界で初めて成功した。類人猿では脚に比べて腕が長いのに対し、ヒトでは腕よりも脚が長いという特徴がある。霊長類iPS細胞から肢芽中胚葉細胞を誘導する実験系は、こうした脚腕の長さや四肢の特徴の進化を解明するための有力な手法になると考えられる。

 また、本研究成果は、ボノボやテナガザルをはじめとする希少動物の遺伝資源を保存するための技術基盤にもつながる。加えて、iPS細胞を活用することで、これまで困難だった希少動物の疾患モデル構築や、薬剤反応性・毒性に関する種差や個体差の評価が可能となり、動物園獣医学の発展にも寄与することが期待される。

論文情報:
【BMC Genomics】Generation and transcriptome profiling of bonobo induced pluripotent stem cells using stealth RNA vectors: a tripartite comparative study with humans and chimpanzees
【Frontiers in Cell and Developmental Biology】Generation and characterization of induced pluripotent stem cells of small apes

京都大学

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