福井県立大学の研究グループは、活マサバにおいて、アニサキス食中毒の主な原因種であるAnisakis simplex s.s.(S型)が筋肉にも寄生していることを発見した。

 アニサキス幼虫が寄生した魚介類を生食すると、激しい腹痛や嘔吐などを引き起こす食中毒(アニサキス症)となる。対策としては「加熱・低温管理」のほか、アニサキスが魚の死後に内臓から筋肉へ移行すると考えられていることから、「漁獲後の速やかな内臓除去」が推奨されている。ただし、漁獲直後に冷凍したカツオの筋肉でアニサキス寄生が確認された例もあり、生体内での移行の可能性も指摘されている。

 そこで本研究では、アニサキス症の主要原因魚種であるマサバを対象に、岩手県、静岡県、長崎県、福井県の4地域の近海でアニサキスの筋肉寄生を検証した。死後移行の影響を排除するため、活マサバを漁獲直後に解剖し、寄生状況を確認した。また、アニサキス症患者からの検出では9割を占めるS型と、同じく日本近海で検出されるA. pegreffii(P型)の2種類を迅速に鑑別する高分解能融解解析法を開発し、マサバから検出されたアニサキス種を同定した。

 その結果、内臓ではほぼすべての個体でアニサキスが検出され、さらに太平洋側の静岡や岩手のマサバ、日本海側の福井のマサバでは、約半数の筋肉(そのうち9割以上が腹側筋)からも検出された。筋肉中のアニサキスはほぼS型であり、S型アニサキスがマサバ生体の筋肉(特に腹側筋)に寄生し得ることが確認された。

 また、静岡、岩手、福井では、内臓と筋肉のアニサキス寄生数に正の相関が認められた。すなわち、S型が多い海域で、かつ内臓の寄生数が多い個体では、筋肉寄生リスクも高く、アニサキス症の危険性が高まることが示唆された。

 本研究により、従来のアニサキス症リスク管理に加え、腹側筋の選択的除去という衛生対策にも科学的根拠が与えられた。さらに、日本海側では従来P型の検出が主とされてきたが、本調査では福井のマサバでもS型が優占していたことから、日本海側のアニサキス種の分布変化とリスク増加が示唆され、継続的なモニタリングの必要性が示された。

論文情報:【Fisheries Science】Anisakis larvae in live-caught chub mackerel from Japan: tissue-specific distribution and sibling species identification

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