大阪公立大学大学院の近藤湧生特任助教らの研究チームは、メダカ(ミナミメダカ)のオスの1日あたりの放精回数の限界と、連続した産卵行動が放精数や受精率、オス・メス双方の行動に及ぼす影響を包括的に解明した。

 オスは1日に何回まで放精が可能かを知ることは、生き物がどのように子孫を残しているのかを理解する上で重要だ。しかし、オスの放精回数の限界や、連続して産卵行動をしたときの精子数や受精率への影響、オスとメスの行動の変化などに関する包括的な研究はなかった。中でも魚類は水中へ卵と精子を放出して体外受精をするため、卵や精子の数量の把握が難しいとされていた。

 研究チームは、メダカのメスを一匹ずつ入れた水槽を複数用意し、オスを次々と異なるメスの水槽に入れて産卵行動を観察。その結果、オスは1日平均19回の産卵行動が可能で、1日の総放精数の50%以上を最初の3回の産卵行動で消費することが分かった。また、開始数回の産卵行動では受精率がほぼ100%だったが、10回目以降は著しく低下し、完全に未受精となることもあった。

 さらに、精子が枯渇したオスとの産卵行動においてもメスは産卵数を調整しないことが判明。結果として、連続した産卵行動において、オスは少量の精子でも卵を受精することができるが、メスにとっては多くの卵が無駄になることが明らかになった。

 今回の研究は、動物の繁殖を理解する上で、「精子が有限である」というこれまで見過ごされがちだった視点を提供する。また、行動生態学上、極めて重要なテーマの一つである精子や卵を作るためのコストと、オスとメスの間で働く性選択や性的対立の関係について重要な示唆を与えるものとしている。

論文情報:【Royal Society Open Science】Male medaka continue to mate with females despite sperm depletion

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