大学進学を控える子を持つ保護者にとって、大学入試は大きな関心事。しかし、その景色はここ数年で様変わりした。いまや、大学入学者の半数以上が、年内に合否が決まる「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」といった、いわゆる「年内入試」で進学先を決めている。

 学力試験一辺倒だった時代とは違い、この「年内入試」、選抜に際しては多様な尺度が用いられる。しかし、それがどのように決められているのかについては、あまり知られていないのが実情である。
私は長年、大学の入試分析を行ってきた後、その設計などで、複数の大学で入試の現物にも立ち会ってきた。その経験から、大学がどのような視点で受験生を評価しているのか、その「本音」の部分とは何かなど、「年内入試」の知られざる合否基準について解説する。

 

合否を見極めるカギは「不合格者の数」にある

 まず、保護者のみなさんに注目してもらいたい、最もシンプルで重要な指標がある。それは「選抜の倍率」、「その選抜試験で、いったい何人が不合格になっているのか」という事実だ。この視点を持つだけで、各大学の年内入試に対するスタンスが驚くほどクリアに見える。

「学校推薦型選抜」――評定平均が合否を分ける

 「学校推薦型選抜」、特に「指定校推薦」が多くの保護者にとってはイメージしやすいかもしれない。 この選抜で大学が最も重視するのは、「評定平均値」、すなわち日々の授業態度や定期テストの結果が反映された高校での成績である。対策は至ってシンプル。特別な受験勉強よりも、まず学校の授業をしっかり受け、その内容を理解することだ。塾や予備校を利用するにしても、それはあくまで高校の授業の補完や、分からなかった点の克服という位置づけになる。大学が示す評定平均値などの要件を満たしていれば、不合格になることが極めて少ないのがこの指定校推薦の特徴である。

「総合型選抜」――大学の「懐事情」で変わる評価基準

 一方で、「総合型選抜」は大学によって評価尺度が千差万別で、非常に分かりにくいかもしれない。
ここで先ほどの「倍率」が重要になる。もし希望する大学の総合型選抜の倍率が1.0倍に近く、しかも定員割れを起こしているような場合、大学側の本音は「一人でも多くの入学者を早期に確保したい」に収斂する。この場合は、自分の意思を表明する志望理由書を提出し、面接等でしっかりと受け答えや発表ができれば、ほぼ合格する。

 それでも不合格者が出ることがある。理由は二つ。一つは、最低限の「評定平均値」に達していないこと。もう一つは、志望理由書の内容が不十分で、大学での学習意欲が疑われると判断されるケースだ。各教科・科目の「評定」が芳しくない場合は「年内入試」は不利になるから、「一般選抜」で合格できるように演習問題をたくさん解いて頑張った方が良い。

なぜ「基礎学力テスト」が課されるのか?

 年内入試で小論文や独自の「基礎学力テスト」を課す大学がある。これは、年内入試での入学者と、厳しい一般選抜を突破してきた入学者との間で、基礎学力の差が大きいと入学後の授業運営に支障をきたすという大学側の悩みの表れである。最低限の学力は担保したいという切実な思いがあるのだ。だからこうした大学に合格した場合は、授業が思ったよりも難しい可能性があり、単位を取れないかもしれないといった覚悟も必要で、合格後は高校の授業で学んだ内容を見直す必要がある。少なくとも一般選抜に挑むクラスの仲間と同じように勉強を続けた方が良いだろう。

難関大学の年内入試――「真面目なだけ」では通用しない

 では、倍率が数倍になり、多くの不合格者が出るような難関大学の年内入試では、何が問われるのであろうか。
こうした大学は、年内入試で定員が埋まらなくても、その後の一般選抜で十分に優秀な学生を確保できるという自信をもっている。だからこそ、年内入試では学力試験だけでは求められない「多様性」を求めている。

 ここで評価されることは、単に授業を真面目に聞き、良い成績を修めていることだけではない。高校の先生のアドバイスなども受けながら、「自分が本当に深く学びたいテーマとは何か」を突き詰め、実際に、探究活動や課外活動などで取り組んだ経験、そしてそこから何を学び取ったのか、そのプロセスも含めて審査されると考えるといい。

 裏を返せば、ただ真面目に高校生活を送ってきただけでは、非常に厳しい戦いになるのが難関大学の年内入試であり、真面目さに加え、資質・能力を問われるということをいまから十分に考えておきたい。

 「年内入試」の準備は、高校3年生になってから慌てて始めるものではない。その合否は、高校に入学してからの日々の過ごし方そのものにかかっているからだ。

 わが子がどのタイプの大学を目指すのか。まずは学校の授業を大切にし、基礎基本を固めること。それが最大の対策になる。そして、もし子どもが難関大学を目指し、何か強い興味や関心を示すのであれば、その知的好奇心を存分に深められるよう励ます、精神的にサポートしてあげること。子どもが保護者に求めるものは気持ちを安定させるための拠り所だ。これが塾や高校の仲間ではなく、保護者だからこそできることだ。忙しくても子どもの気持ちを聞いてあげる。高校1、2年生のいまだからこそ求められる、本質的な入試準備がここにある。

教育ジャーナリスト、本誌編集委員

後藤 健夫

教育ジャーナリスト、大学コンサルタント。 南山大学卒業後、学校法人河合塾に就職。独立後、大学コンサルタントとして、有名私大などにおいてAO入試の開発、入試分析・設計、情報センター設立等に関与、早稲田大学法科大学院設立にも参加。元・東京工科大学広報課長・入試課長。文部科学省受託事業で神奈川県立山北高校にてカリキュラム等専門員も務めた。『セオリー・オブ・ナレッジ―世界が認めた「知の理論」』(ピアソンジャパン)を企画・構成・編集した他、専門誌への寄稿多数。2023年3月には『ホンマでっか⁈TV』に「次世代教育評論家」として出演。現在日本経済新聞夕刊に連載コラム執筆。 高校や大学、地方自治体での講演、ゲストスピーカー多数。

 

大学ジャーナルオンライン編集部

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