東京科学大学医歯学総合研究科 整形外傷外科治療開発学講座の王耀東准教授らの研究チームは、株式会社Magic Shieldsとの共同研究により、衝撃吸収床材が高齢者の転倒による骨折予防に有効であることを科学的に実証した。世界に先駆けて超高齢化が進行する日本において、日本発の科学的エビデンスが国際的に認められた成果となる。

 高齢者の転倒による大腿骨骨折は国内で年間約20万件発生し、関連する医療・介護費は年間約2兆円に達すると推計される。自宅退院が困難となり介護保険サービスへの移行を余儀なくされることも多く、早急に解決すべき課題となっている。

 そこでMagic Shieldsが開発したのが衝撃吸収床材『ころやわ®』だ。薬物療法・運動療法・ヒッププロテクターといった「転倒させない」から「転んでも骨折させない」に発想を転換し、大きな負荷がかかったときだけにつぶれる独自の構造体を素材に採用し、普段はフローリングとほぼ同等の安定性を保ち、人の歩行や車いすの通行でへこむことがない。しかし、転倒時など大きな負荷を受けると衝撃を吸収する仕組みが働くという歩行安定性と衝撃吸収性を両立させている。

 王准教授は『ころやわ®』の骨折予防効果を科学的に検証するため、実際に大腿骨近位部骨折を受傷した日本人高齢女性の大腿骨CTデータと『ころやわ®』をはじめとする床材の物理特性を組み合わせた新しい有限要素解析モデルの構築に成功。これにより、人体に直接危険を及ぼすことなく転倒時の衝撃エネルギーに相当する動的衝撃試験をコンピューター上で再現し、床材の骨折予防効果を評価することが可能となった。

 効果実証論文では、大腿骨を転倒で骨折した高齢女性のデータからコンピューター上に大腿骨の3次元モデルを作製、後方への転倒時の衝撃に相当する解析モデルを開発し、コンクリート上に各種床材を置いた条件で骨折予防効果を調べた。その結果、医療・介護施設で使用される厚さ2ミリのビニールシート上に転倒すると骨折したが、厚さ22ミリの『ころやわ®』上だと骨折を予防できることが分かり、日常生活での歩行や車椅子移動時には硬く安定している『ころやわ®』が、歩行時の不安定さが課題であった従来のスポンジマットと同等の骨折予防効果を有することが、科学的かつ視覚的に示された。

 本研究は高齢化が進む世界に向けて日本発の転倒骨折予防技術の社会実装を後押しする成果であり、経済産業省商務情報政策局 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課が運営するHealthcare Innovation Hub(InnoHub)を介した産官学連携の成功事例としても重要な意味を持つ。

論文情報:【Biocybernetics and Biomedical Engineering】Development of a CT-based finite element model to evaluate the efficacy of shock-absorbing floors for fragility hip fracture prevention: An industry–government–academia partnership in Japan’s super-aging society

参考:【東京科学大学】衝撃吸収床材による高齢者の転倒骨折予防効果を科学的に実証

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