学部系統の人気は、法学、獣医、情報

 模擬試験の学部系統別の志望動向から、受験生に人気の学部を見ると情報系と薬学系は2021年度入試に引き続き高い人気となっています。情報系には、近年新設が相次ぐデータサイエンス系の学部学科が含まれますので、その影響が大きいと言えるでしょう。河合塾 の大学入試情報サイトで「2022年度 新設大学・増設学部・学科一覧」を見ても情報系の新設が多く見られます。ただ、この情報系も、理学系の数学系、工学系の情報科学系、近年のデータサイエンス系など系譜が様々です。さらに社会科学系の情報系もありますので受験生は、データサイエンスという流行の言葉に惑わされることなく、冷静に学部選びをしたいところです。

 例えば、ビジネスに生かすデータサイエンスであれば、伝統校の経済・経営・商学系の学部でマーケティング系のゼミに入れば十分に学ぶことができます。というよりもこちらの方が良いのではないかと思うぐらいです。また、既存のデータ分析用のアプリケーションソフトに限界が生じた場合、工学系で情報科学を学んだデータサイエンティストは自ら分析ソフトを作ってしまいます。従来からある伝統学部でもデータサイエンスは十分に学べます。新設されるデータサイエンス系の学部は何が新しいのか、受験生が自分で調べて分からなければ直接大学に聞いても良いでしょう。

 情報系以外では「法学」と「獣医」の人気が高まっています。この2分野は2021年度入試でも志願者数の減少幅が小さいなど、隠れた人気分野でしたが、2022年度入試では人気の学部系統と言えます。前述の駿台模試でも法学系は、国公立大学、私立大学ともに志望者数が増加しています。これらの学系の人気について、メディアの入試記事では、法学系人気=公務員志向、獣医人気=資格志向と解説されていますが本当でしょうか。就職氷河期と言われた90年代にはそうした事も言われていましたが、現代の受験生の学部選択は、生徒たちなりの興味関心や理由があって行われていますので、そんな単純な法則で法学人気、獣医人気になっているとは思えません。コロナ禍での不平等、人権問題や社会規範に対する感度が上がったことや環境破壊や自然災害によって被害を受けている野生動物保護への関心がこれらの分野に受験生を向かわせているのが人気の理由なのではないでしょうか(SDGs仮説と言えなくもありません)。

【参考】
河合塾 大学入試情報サイト「2022年度 新設大学・増設学部・学科一覧」
https://www.keinet.ne.jp/exam/future/

 

 

情報法、ヒューマンライツなど新しい法学系学部学科も

 法学系では2022年度に青山学院大学が法学部ヒューマンライツ学科を新設予定ですが、まさにヒューマンライツ(人権)ですので、先程のSDGs仮説によれば、受験生の関心の真ん中に位置づけられることになります。新設の学部学科は受験生の認知が高まるまでに時間を必要としますので、現段階ではまだ高い注目を集めている状況ではありませんが、今後、受験生がどう反応するか、注目できる新学科です。

 この他には、新設学部ではありませんが、2019年に開設された中央大学国際情報学部も情報に関する法律を扱う学部としてユニークな位置づけにあります。この国際情報学部の教育課程表(カリキュラム)を見ると、どう見ても法学系の学部なのですが、学部名に“法”が冠されていないことと国際経営学部と同時期に設置されたことから、「国際系」と認識されているふしがあります。学部の内容が受験生に正しく伝わっていないようですが、情報の法律を学ぶ学部ですので、人気の法学系の中でも現代的な新しい法律分野として注目できます。

 高大接続改革も2年目に入り、落ち着きかけているようにも見えます。ただ、多くの入試分析の専門家が、大学入学共通テストの平均点は下がると予想するなど波乱の予感もありますが、一方で現役生、既卒生を合わせても大学志願者の実人数が大学の入学定員を下回るという予想もされています。2022年度入試は受験生にとって大学入試が広き門になることは間違い無さそうです。

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神戸 悟(教育ジャーナリスト)

教育ジャーナリスト/大学入試ライター・リサーチャー
1985年、河合塾入職後、20年以上にわたり、大学入試情報の収集・発信業務に従事、月刊誌「Guideline」の編集も担当。
2007年に河合塾を退職後、都内大学で合否判定や入試制度設計などの入試業務に従事し、学生募集広報業務も担当。
2015年に大学を退職後、朝日新聞出版「大学ランキング」、河合塾「Guideline」などでライター、エディターを務め、日本経済新聞、毎日新聞系の媒体などにも寄稿。その後、国立研究開発法人を経て、2016年より大学の様々な課題を支援するコンサルティングを行っている。KEIアドバンス(河合塾グループ)で入試データを活用したシミュレーションや市場動向調査等を行うほか、将来構想・中期計画策定、新学部設置、入試制度設計の支援なども行なっている。
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