2020年度から「高等教育機関の修学支援新制度」ができ、2024年度で5年目を迎えます。この制度は、世帯年収や資産の要件を満たし、学ぶ意欲があれば、授業料等の減免と給付型奨学金によって、学生への経済的支援を行うというもの。授業料の減免に加えて、生活費にも充てられる奨学金まで支援してもらえるのであれば、高校新卒を対象とした夜間部の役目は終わったのではという見方もできます。では、現在残っている夜間部は、どのような募集をしているのでしょうか?国公立大学と私立大学に分けてレポートしていきます。

 

新制度導入の結果、住民税非課税世帯の進学率が上昇

「高等教育の修学支援新制度」は、消費税率10%(2019年10月より)への引き上げによる増収分の一部を財源とし、2020年4月より始まりました。年収約380万円未満の世帯を対象に授業料の減免や給付型奨学金を出す制度で、2021年度実績で約31.9万人を対象に約1,437億円(JASSO発表)の奨学金が支給されています。

新制度導入の結果、住民税非課税世帯の進学率は2018年度40.4%から2021年度には54.3%まで上昇(いずれも推計値)しており、成果が出ているようです。2024年度からは、子育て支援の観点から多子世帯の中間層や理工農系の中間層にも対象を拡大することが決まっていますので、この制度を活用すれば、「お金がないから大学進学できない」「お金がないから夜間部しか選択できない」という生徒はますます少なくなってくると予測されます。

高等教育の修学支援新制度の新設や教員の働き方改革もあり、大学の夜間部は減少の一途をたどっている

もともと勤労学生向けに設置された夜間部は、夜間しか開講していませんでしたが、多くの大学では、夜間の講義を主体とするものの、昼間の講義も選択できる「夜間主コース」に変化していきました。それもあってか、昼間に働いていない学生がいるのも実態としてはあるようです。

この「夜間主コース」、2024年度より茨城大学工学部機械システム工学科(夜間主コース)と富山大学経済学部(夜間主コース)が募集停止を発表しています。これまでも、毎年のように募集停止があり、昼間部の定員への振替えが行われている状況です。募集停止要因は、高等教育の修学支援新制度の新設によるものだけでなく、21時過ぎまで講義をすることになる教員の働き方改革の要因もあるようです。

表1 夜間部 募集停止と入学定員変更(拡大画像はこちらをクリック)

(国公立大学)夜間主コースを設置する現在18大学。うち一般選抜で受験できるのは、11大学。一般選抜募集定員比率は平均52%

夜間主コースを設置する国公立大学は、理工系で5大学、人文社会科学系で13大学。このうち、埼玉大学・福島大学・香川大学は、社会人向け入試となっています。また電気通信大学については、原則として社会人対象となっているが、社会人以外でも夜間の修学を必要とする者は受験可能。残りの14大学では、社会人選抜と高校新卒生が受験できる入試が複数設定されています。

地域で見ると、北海道2大学、東北2大学、関東2大学、東海2大学、関西3大学、中国四国6大学、沖縄1大学。人口割合から考えても、中国四国地方にかけて集中しているのが分かります。また、一般選抜で受験できる国公立大学は11大学。入学定員に占める一般選抜募集定員の割合を見ると50%を超えている大学も多くあり、高校新卒生を募集対象にしていることが分かります。昼間主と夜間主コースにおける、河合塾偏差値は概ね5.0の差があります。河合塾の偏差値が一番高いのは、神戸市外国語大学の55.0です(2023年11月10日時点)。

表2 国公立大学 「夜間主」入学定員と一般選抜比率 ※2024年度入試データ(拡大画像はこちらをクリック)

(私立大学)夜間主・二部・イブニングコースを設置するのは11大学。一般選抜は全私立大学で実施。規模が一番大きいのは、東洋大学の入学定員710名

夜間主・二部・イブニングコースを設置する私立大学は、理工系で2大学、人文社会科学系で9大学。ほとんどの大学で、共通テスト利用入試や一般個別入試など複数の入試を実施しており、募集対象を社会人だけに限定している大学はありません。地域で見ると、北海道1大学、関東4大学、関西1大学、九州2大学と、関東地区に集中しているのが分かります。どの大学も社会人でも通いやすい駅前にあるキャンパスとなっています。

また、すべての私立大学で一般選抜で受験でき、募集定員比率は平均で62%で、年明けからでも多くが受験可能なことが分かります。最大定員を持つ東洋大学では一般選抜の募集定員が472名となっており、入学定員の中に占める比率も66%と高くなっています。

表3 私立大学「夜間主・二部・イブニングコース」入学定員と一般選抜比率 ※2024年度入試データ(拡大画像はこちらをクリック)

高校新卒の夜間部選択は、第一希望なのか?それとも昼間部のすべり止めなのか?

18歳人口の減少もあり、昼間部でも合格しやすくなったこともあり、夜間部の縮小は続いています。1990年代までは、昼間部に不合格だったから夜間部に進学する生徒、昼間部には学力レベルが足りないがどうしてもその大学に入学したいから夜間部を選択、という人も多くいました。

今でも、そのような選択をする生徒がいるのは事実としてあります。2020年度から高等教育の修学支援制度ができたのだから、金銭的な問題による夜間の選択はかなり減少したのではないかと考えられますが、家庭により様々な事情があり夜間部を第一希望として受験する生徒もいます。また、学生自身の生活リズムとして夕方から講義がはじまる方が合っているというケースもありますので、100%必要なくなることはありません。

しかしながら、夜間部はさらに縮小していくことが予測されます。大学も校舎・施設設備の問題や、教員の配置などもありますので、すぐに昼間部に振替えができるというものでもありませんが、学部改組のタイミングで変更していく可能性は高いと考えられます。

社会人向けの大学の夜間部は、オンライン活用で変わっていくタイミングか

社会人向けの夜間部は、リスキリングの流れもあって必要とされていますが、オンライン(通信)を大きく取り入れるなど、従来の夜間部とは異なるかたちにしていかないと広く集めていくのは難しいと考えられます。近畿大学建築学部通信教育課程の新設のように新しい動きも出てきており、夜間部の今後の変化が注目されます。

大学ジャーナルオンライン編集部

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