横浜市立大学の高橋琢哉教授らの研究グループは、東京大学、大阪大学との共同研究により、トラウマ記憶を光操作により消去する新規技術の開発に世界で初めて成功した。心の傷をコントロールする新規治療法の開発に寄与することが期待される。

 脳は外界から刺激を受けると、神経細胞(シナプス前末端)から放出された神経伝達物質が別の神経細胞(シナプス後末端)の受容体に結合して情報が伝わる。神経伝達物質の1つがグルタミン酸で、その受容体の1つがAMPA受容体。これまでの研究で刺激によりシナプスが変化(可塑的変化と呼ばれる)するとき、AMPA受容体がシナプス後膜(刺激を受ける側の細胞膜)に移動することが分かっていた。また、トラウマ記憶の形成には、脳の記憶中枢である海馬で生じるAMPA受容体のシナプス移行が必要であることも明らかになっていた。

 研究グループが用いたのは「光操作分子不活性化(CALI)」技術で、光増感物質と呼ばれる物質が光に反応して発生する活性酸素により、標的とするタンパク質を不活性化するもの。以前の研究で、光増感物質にエオシンを採用すると高効率にCALIが可能であることが分かっていた。今回、ラットの海馬にエオシンでラベルした抗体を注入した後、暗い部屋で電気ショックを与える「恐怖条件付け(IA task)」によりトラウマ記憶を形成。その後、光ファイバーを用いて光を海馬に照射し、シナプスへ移行したAMPA受容体を破壊することでトラウマ記憶の消去に成功した。

 今回の研究は記憶形成のメカニズム解明、さらにはPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの心の傷に起因した社会性障害等の精神障害をコントロールする新規治療法開発の糸口になると期待される。

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東京大学は東京開成学校と東京医学校が1877(明治10)年に統合されて設立されました。設立以来、日本を代表する大学、東西文化融合の学術の拠点として、世界の中で独自の形で教育、研究を発展させてきました。その結果、多岐にわたる分野で多くの人材を輩出し、多くの研究成[…]

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大学ジャーナルオンライン編集部

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