新潟大学の研究チームは、血管内皮増殖因子(VEGF)が、水俣病で侵される小脳や後頭葉に強く発現し、脳血管を破綻することを初めて発見した。また、VEGFを中和する抗体療法がモデル動物の症状を改善。水俣病の病態解明と治療開発につながる画期的な成果という。

 メチル水銀中毒は、日本では水俣病や新潟水俣病として知られているが、発展途上国などでは、金の採掘などに関連して今なお散発的に発生する。発症早期(急性期)での治療はメチル水銀を体内から排泄するキレート剤しかないが、その効果は不十分で、ふらつきや視野狭窄などの後遺症をもたらすため、急性期治療薬を開発する必要があった。しかし、障害を受ける部位がなぜ小脳、後頭葉、中心後回なのかが不明で、水俣病最大の謎だった。

 研究チームは水俣病重症例を検討し、メチル水銀が従来報告されてきた神経細胞だけではなく、血液脳関門(血管のバリア機能)も障害するという仮説を立てた。そこでラット急性期メチル水銀中毒モデルを用いて、脳のさまざまな部位における血管内皮増殖因子(VEGF)の発現を確認した。

 その結果、VEGFは水俣病で障害のみられる小脳・後頭葉で増加し、特に小脳での発現が顕著だった。VEGFは血管バリア機能の破綻を起こすが、実際に小脳では血管内の物質が脳組織へ漏出していた。このためメチル水銀中毒に伴う血管内の有害物質が脳内に漏れ出して神経障害が生じると考えられた。また、VEGFの作用を中和する抗VEGF抗体を、メチル水銀中毒ラットに投与したところ、運動機能の障害(後肢交叉現象)に改善がみられた。

 今後はVEGFの抑制方法を検討し、メチル水銀中毒に対する治療の効果と安全性を確認し、臨床応用につなげるとしている。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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