東京農業大学生命科学部バイオサイエンス学科の喜田聡教授らのグループは、マウスを用いて他者を認識する社会記憶を定着させる神経メカニズムを解明した。

 他者を記憶しておくことは我々が円滑な社会行動を営むために必要不可欠な能力だ。しかし、他者を認識する「社会記憶」を脳に定着させるメカニズムは不明だった。

 マウスは鼻を相手に接触させて臭いを嗅ぐ行動をとることで相手を認識する。研究グループは、マウスのこの社会行動後に活性化される神経領域に関し、初期応答遺伝子群の発現を指標にして検討した。その結果、海馬、前頭前野、偏桃体、帯状皮質における遺伝子発現が社会記憶の固定化に必要であることが分かった。

 さらに、この4領域のそれぞれにタンパク質合成阻害剤を注入して遺伝子発現を阻害した影響を解析。その結果、どの領域の遺伝子発現を阻害しても、2時間程は相手を覚えているが、一日経過後には思い出せなかったことから、4領域すべてが社会記憶の固定化に必要と分かった。

 また、数理学的解析により、社会記憶を形成するために、脳内に4領域を中心とするネットワークが形成され、海馬が社会記憶を貯蔵する神経ネットワークの中心として他領域を束ねていることが明らかになった。

 これらの成果から、記憶は脳内の複数の領域に貯蔵され、さらに、記憶のタイプ毎に貯蔵する領域が異なると示唆される。これにより脳内に記憶が保存される全容解明に近づいたとしている。また、社会記憶は社会行動(社交性)を決定する素因となるため、「自閉症」の病態解明と社会行動の観点からの改善方法の開発に寄与することが期待される。

論文情報:【The Journal of Neuroscience】Functional Connectivity of Multiple Brain Regions Required for the Consolidation of Social Recognition Memory

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大学ジャーナルオンライン編集部

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