産業技術総合研究所バイオメディカル研究部門脳遺伝子研究グループの落石知世主任研究員、北海道大学大学院先端生命科学研究院の北村朗助教、順天堂大学医学部脳神経内科の志村秀樹准教授らは共同で、アルツハイマー病の原因因子の一つであるアミロイドβ(Aβ)タンパク質の動態を、生きた神経細胞内や生体内で可視化する技術を開発しました。

 Aβは容易に重合し、大きな凝集体を形成します。生きた細胞や個体内のタンパク質の局在などの観察には緑色蛍光タンパク質(GFP)がよく使用されますが、AβとGFPを融合させたタンパク質(Aβ-GFP)は、Aβの重合によりGFPの蛍光が阻害されるとされます。そのため、生体内で発現させてもAβが重合すると蛍光が観察されず、Aβの局在や動態の可視化は困難でした。

 これまで、AβとGFPをつなぐアミノ酸配列(リンカー)として12個以下のアミノ酸が用いられたものはAβが重合するとGFPの蛍光が消失していました。今回、リンカーに14個のアミノ酸を用い、Aβの重合状態と無関係に蛍光が観察できる融合タンパク質を開発しました。このAβ-GFPは、GFPの融合によりAβの重合が一定以上進まず、生体の内外で2~4量体を中心としたオリゴマーの状態で存在することが判明。これにより、生きた細胞内でAβのダイナミックな動きや、初代培養神経細胞内での蓄積状態などの解析が可能となるとしています。また、アルツハイマー病発症に関与する毒性の強いAβオリゴマーを形成するため、Aβオリゴマーの重合の度合いと細胞への毒性との関係などの解析が可能になるとのことです。

 今後は、培養細胞や生きた個体を用いたアルツハイマー病治療薬の候補物質のスクリーニングへの応用や、アルツハイマー病の発症メカニズムの解明への貢献が期待されるとしています。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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