Anthropology: Family matters in an Early Neolithic tomb
英国グロスターシャーの約5700年前の新石器時代の墓に埋葬された35人の詳細な遺伝的解析が行われ、この古代社会を支配していた親族関係のルールを解明するための新たな手掛かりが得られた。この知見について報告する論文が、Nature に掲載される。今回の研究から、この社会では、養子縁組が行われていたと考えられ、父系の子孫と母系の子孫の両方が重要視された一夫多妻の社会であった可能性が暗示されている。
全ての遺体は、ヘイゼルトンノースに埋葬されていた。ヘイゼルトンノースは、前期新石器時代の長い石塚で、その中には、2つのL字型の部屋が向かい合って位置しており、それぞれnorth(北)とsouth(南)と命名されている。今回、David Reichたちは、古代DNAから抽出したゲノム規模のデータと考古学的分析を組み合わせて、35人中27人が同じ家族に属することを明らかにした。この家族は、5世代にわたる系統で、1人の男性と4人の女性の子孫によって構成されている。
そのうちの15人は、父方の系統でつながっており、このことは、父系の影響力を示唆しているが、その一方で、母系の子孫の埋葬場所に作為性が見られ、母系も重要なことを示している。4人の母親のうちの2人の子孫は、南の部屋に埋葬され、他の2人の母親の子孫は、北の部屋に埋葬されていた。この知見は、母方の亜系統が、墓の建設時に独立性の高さが認められた枝にグループ分けされたことを示唆している。
また、Reichたちは、母親がこの系統に含まれているが、父親が含まれていない4人の男性を特定した。この知見は、養子縁組による親族関係が、生物学的親族関係と同じくらい重要であった可能性を示している。この墓には、主要系統と生物学的近縁関係にない8人も埋葬されており、その意義は不明だが、この古代社会にとって、非生物学的な親族関係も重要であった可能性を明確に示している。
[英語の原文»]
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
※この記事は「Nature Japan 注目のハイライト」から転載しています。
転載元:「人類学:前期新石器時代の墓から垣間見る親族関係」