名古屋市立大学の松川則之教授(神経内科学)、津田曜大学院生(神経内科学)ら研究チームは、岐阜薬科大学の原英彰教授(薬効解析学 現岐阜薬科大学長)と共同して、これまで認知症の原因物質とされているアミロイドβの蓄積量や炎症に変化がなくても、脳内ペプチド「HCNP(海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド)」が減少することで記憶障害が早期に顕在化することを世界で初めて実証した。認知症の悪化を食い止める鍵になる発見となった。
すべての高齢者が罹患(りかん)する可能性がある疾患である「認知症」。先進国においては社会参加の頻度が上昇するなど高齢者の生活の質の変化や高血圧など脳血管障害リスク管理が改善したこともあり、認知症有病率は減少しているが、日本ではこれを上回る勢いで高齢者人口が上昇するために、65歳以上の患者が400万人を超え、なお増え続けている。
認知症の原因の約6割はアルツハイマー病であり、アミロイドβと異常リン酸化を受けたタウ蛋白の蓄積による神経細胞死が主病態と考えられている。近年アミロイドβを対象とした疾患修飾薬(病気の原因物質などそのものに作用して発症や進行を抑制・遅延させる薬剤)が市販されたが、その臨床的効果は十分とは言えず、更なる認知機能改善のためには、病理変化とは異なる視点から症状の改善を議論する必要性が示唆されていた。
同共同研究チームは、認知症患者の症状改善、維持のため、病理変化とは異なる視点である「神経機能を改善・活性化させる等の視点」から研究を継続しており、この視点からの創薬研究を加速させる画期的な発見となった。
