Environment: Global socioeconomic risks from wildfire assessed

 
このほど実施された機械学習研究で、21世紀に山火事への曝露と山火事の社会経済的リスクの増加が加速するが、全世界の山火事による炭素排出量の増加は鈍化する可能性が示唆されたことを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の研究で得られた知見は、山火事への曝露に地域格差が生じている可能性についての理解を進め、将来の山火事に対する戦略的備えに役立つ可能性がある。

山火事とそれに伴う社会経済的リスクについて信頼性の高い予測を得ることは、気候変動に対処し、気候変動の影響を緩和する戦略を策定する上で重要だ。しかし、長期的な山火事の予測に使用されている現在の地球システムモデルは、いくぶん不確かなままになっている。

今回、Yan Yu、Jiafu Maoたちは、機械学習を使って、第6期結合モデル相互比較計画で構築された地球システムモデルによる山火事の炭素排出量と社会経済的リスクのシミュレーションの制約条件を設定し、炭素排出量と社会経済的リスクの研究を行った。Yuたちは、21世紀には、山火事による炭素排出量の増加は鈍化するが、全世界での山火事への曝露は、人口、国内総生産(GDP)と農業地域の点で、増加が加速するという考えを示している。また、Yuたちは、これまで山火事の発生件数の多かったアフリカ、オーストラリア北部、南米東部の森林やサバンナで、21世紀も山火事が頻繁に発生する状態が続く可能性も示している。さらに、西アフリカと中央アフリカ諸国における山火事活動と社会経済的発展(人口、GDP、農業など)の増進は、これらの地域の社会経済的リスクを高めるかもしれないことも判明した。

doi:10.1038/s41467-022-28853-0
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「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

 
※この記事は「Nature Japan 注目のハイライト」から転載しています。
転載元:「環境:世界の山火事の社会経済的リスクの評価

Nature Japan

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