東京大学大学院理学系研究科の渡部裕介・一色真理子大学院生(研究当時)と大橋順准教授は、都道府県レベルで日本人約11,000名の遺伝的集団構造を調べ、現代日本人の遺伝的構造は各都道府県における縄文人と渡来人の混血の程度と地理的位置関係によって特徴づけられることを示した。
現代の日本人(アイヌ人、琉球人、本土人)は、縄文人系統と渡来人系統の混血集団の子孫とされる。日本の7つの地域間の遺伝的異質性を指摘した先行研究では、中国・四国地方の県は含まれず、7地域に分割する妥当性や、詳細な遺伝的集団構造とその成因は明らかではなかった。また、地域間の遺伝的異質性が不明なため、日本人対象の疾患遺伝子関連研究では、集団階層化によるバイアス(偏り)を避けた検体収集が困難だった。
今回、研究グループはヤフー株式会社が提供するゲノム解析サービスの顧客11,069名の138,688か所の常染色体SNP(単塩基多型)遺伝子型データを用い、日本人の遺伝的集団構造を調べた。
クラスター分析により、47都道府県は沖縄県とそれ以外の都道府県に分かれ、沖縄県以外は九州・中国地方、東北・北海道地方、近畿・四国地方の3つのクラスターに大別された。関東・中部地方の各県は1つのクラスター内に収まらなかった。主成分分析の結果、第1主成分は沖縄県との遺伝的距離と関連し、第2主成分は緯度・経度と関連していた。この結果は、各都道府県の縄文人と大陸からの渡来人との混血の程度の違いと地理的位置関係が、現代日本人の遺伝的地域差形成の主要因とみられる。
今回の研究により、日本人の形成過程の理解が進み、疾患遺伝子関連研究において適切な検体収集地域の選定が可能になると期待される。