成長産業として注目される「グリーン分野」。2027年度には、東洋大学の「環境イノベーション学部」や龍谷大学の「環境サステナビリティ学部」が開設される予定で、農学部と並び、今後も学部新設が続きそうな領域となっている。

 こうした流れの中で、いち早く「環境学部」を立ち上げたのが立教大学だ。同学部にはすでに一期生が入学しているが、どのような学生が学んでいるのだろうか。今回は、環境学部の大久保奈弥教授と山本絢子准教授のお二人に話を伺った。

 

文理比率1:1の実績も 学際的な知見を養う環境学部

 立教大学は2026年度より環境学部を開設。立教大学といえば文系学部が多く、理系を半分含む学部のひとつとして環境学部を新設するというニュースは大きなインパクトを与えた。

 同学部では文系型入試と理系型入試を実施し、募集枠を同数設置している。

 「本学部は文理融合を重視しています。そのため文系学生と理系学生がどちらもいることが重要です。教員も、文系と理系が半々になるようにしています」(立教大学環境学部・大久保奈弥教授)

 環境分野の基礎科学から社会実装まで、多様な教員をそろえたこと、研究環境が整っていることなどをアピールし、理系学生からの関心を集めた。その結果、一期生の入試では文系と理系の比率が1:1という結果に。

「例えば生き物の研究をしたいだけでなく、その生き物を保全したい、ひいては地球レベルの環境問題の解決にも寄与したい。本学部は、そういった気持ちを抱える学生の受け皿にもなったと感じています」(大久保教授)

 サンゴの生物学者であり、その分類で顕著な業績を挙げて国際誌の賞を受賞、世界共通のデータベースや動物図鑑の内容を塗り替えた大久保教授だが、卒業したのは立教大学文学部ドイツ文学科だ。大学院から理系に転向し、サンゴの増殖研究で博士号を取得。研究だけでなく、環境教育の実践や実際の保全活動に取り組むうち、文理双方の視点の大切さを実感したという。

 「理系人材が基礎的な科学データを蓄積しても社会実装する際には人文社会系の研究が必要です。環境に関する活動は、文理の枠を越えて協力しないと成り立ちません」(大久保教授)

 同学部の山本絢子准教授も、高校時代は文系を選択。カナダの大学進学を機に理系に転向し、気候力学を専門として名門マギル大学で博士号を取得した。大気と海洋のダイナミクス解明で国際的な賞を受賞するなどその業績が評価され、国際パネルの委員としても活躍している。

「当学部では理系の基礎科目が必修となっていますが、理系の前提知識が全員に共通しているわけではありません。それでも、環境問題の解決に繋がる社会実装を担っていくには、文系の視点と科学的な根拠の両方が不可欠です。環境学部を通して、そうした社会実装を担う上で大きな役割を果たす文系の学生にも、専門知識を噛み砕いて伝えることで、理学的な素地を身につけてもらいたいと考えています」(山本准教授)
立教大学 環境学部 大久保奈弥 教授(左)と同学部 山本絢子 准教授(右)

 入試では文系型・理系型にわかれて受験できることもあり、入学初期はどうしても高校時代の理系科目の既習範囲に違いが出てしまう。そこで、早期に差を埋め、理系の専門領域へ進むことを考えている文系学生の理転も可能になるよう支援も充実させた。

「高校時代に理系科目をあまり選択していなかった学生向けに、数学や生物などの授業も用意しました。もちろん理系学生が満足できる内容も扱い、文理どちらにも興味を持ってもらえる授業を展開します」(大久保教授)

特徴的な科目 文系教員と理系教員がぺアで受け持つフィールドワーク「環境フィールドスタディ」

 立教大学では、もともと全学部の学生を対象に文理どちらも履修する「全学カリキュラム」を実施してきた。リベラルアーツに長年取り組んできた知見は環境学部のカリキュラムにも反映されている。

 環境学部では、自然科学、人文・社会科学など、環境に関する分野を多角的に履修。さらに初年次の「環境リーダーシップ」では、目標に向かってお互いの長所を活かして協力し合うシェアド・リーダーシップを身につけ、グループワークの力を高める。

 もっとも特徴的な科目が、文系教員と理系教員がぺアで受け持つフィールドワーク「環境フィールドスタディ」だ。1年次から必修で、9種類のコースが用意されている。将来所属する研究室とは関係なくコースを選び、視野を広げるきっかけとするそうだ。

 山本准教授は、井戸水などの利用に関する環境政策研究が専門の教員とともに長野県安曇野市・大町市を訪れ黒部ダムの視察や里山での間伐体験などを通し、地域の水循環と地球規模の気候変動対策の繋がりを多角的に学ぶ。

「豊かな水資源を保全する取り組みや森林の大切さ、そして水力発電が、気候変動対策や私たちの社会の仕組みやルールとどう結びついているのか、さまざまな観点から学んでもらいます」(山本准教授)

 大久保教授が作成したコースでは、環境アセスメントの制度を研究する教員と共に、青森県つがる市と深浦町の風力発電所を訪問。特筆すべきは、再生可能エネルギーをめぐって立場の異なる関係者を一堂に集めたことだ。

 発電所を建設・運営する事業者だけでなく、事業の審査にあたる国の委員(生態学者)、そして鳥類保護の現場に立つ日本野鳥の会の自然保護室主任研究員に参加してもらい、風車への鳥衝突といった生物多様性への負のインパクトも学生に学ばせた。

 さらには、風車の建設時に整備された道路が地域の林業振興に役立っている点にも着目。事業者の協力の下、深浦町役場と青森県庁の林業担当者から話を聞く日を設け、地域振興の視点にも触れさせた。

「環境問題には決まった答えがありません。答えは我々自身が作っていくものです。学生には多様な声を聞いて考える経験を積んでほしいと思います。環境正義の理念を身につけ、卒業後は日本を背負う環境リーダーとして活躍してもらいたいです」(大久保教授)
立教大学環境学部の教育・研究の拠点となる新研究室棟19号館は地上3階建ての木造建築で、庇(ひさし)や木格子による日射制御、太陽光パネルによる発電効果の「見える化」など、学生が日常的に環境技術の効果に触れられるパッシブデザインを随所に採用

環境学部の一期生入試では、男子45%、女子55%

 理系学部への進学を視野に入れる際、学部の男女比が気になる方もいるだろう。グリーン系で代表的な農学部は、理系学部のなかでは女子学生の比率が高い。東京農業大学や名城大学も約半分が女子学生だ。環境系の学部も同様の傾向になるのだろうか。

 立教大学環境学部の一期生入試では、男子45%、女子55%と、女子がやや多い結果になったようだ。立教大学全体の女子率の高さも影響を与えているが、男女ともに関心を集めた学部だといえるだろう。

立教大学

"RIKKYO Learning Style”で「新しい」グローバルリーダー力を習得

立教大学は、1874 年の創立以来、国際性やリーダーシップを育むリベラルアーツ教育を実践。現在は、11学部27学科10専修1コースを設置しています。心の豊かさとリーダーシップをあわせもち、グローバルな課題と社会的要請に対応し、広い視野に立って課題を発見・解決で[…]

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