東京農工大学、国立環境研究所、ミュージアムパーク茨城県自然博物館、長野県環境保全研究所らの研究グループは、数年周期で繰り返されてきたツキノワグマ(以下、クマ)の大量出没に伴う大量捕獲が、クマ個体群の年齢構成に影響を与えていることを明らかにした。
秋の主要なクマの食物であるブナ科の樹木では、広い範囲で果実(ドングリ)の豊作・凶作が同調しやすいことが知られている。こうした果実の凶作などを背景に、秋にクマが人間の生活圏に大量に出没する年(大量出没年)が数年に一度の頻度で現れる。人の安全を確保するため、大量出没年にはクマの大量捕獲(駆除)が行われてきた。
人との軋轢を軽減しながら、野生動物の健全な個体群を管理していく上で、特にクマのように寿命が長い動物の場合は、生息数のモニタリングだけでは不十分である。生息する個体の年齢構成もまた、個体群の存続に影響を及ぼす。そこで本研究では、長野県、群馬県、栃木県に生息する越後・三国個体群のメスのクマを対象に、2001年~2017年の17年間にわたる年齢構成の推移を復元することで、クマの大量出没に伴う大量捕獲の影響を分析した。
捕獲された個体の記録から、その地域の生息数や捕獲のされやすさ(捕獲確率)を逆算する統計モデルを用いて推定したところ、大量出没年かどうかに関わらず、高年齢のメスほど捕獲されやすいことがわかった。大量出没年では、すべての年齢層で捕獲確率が平常年のおよそ2~4倍に達した。
その結果、大量捕獲が繰り返されるほど高年齢のメスが多く失われることとなり、推定された生息数は17年間で大きく変わらなかった(増加率0.98)一方で、繁殖の中心を担う7歳以上のメスの割合が減り、代わりに1~6歳の若い個体の割合が増加するという年齢構成の変化が進行していることが判明した。
本研究により、クマの大量捕獲が繰り返されることで、生息数が大きく変わらない場合でも、繁殖可能なメスの割合が低下しうることが定量的に示された。この結果は、クマの個体群を管理していく上で、生息数だけでなく年齢構成にも目を向けることの重要性を示している。
