2025年6月11日、学術出版社シュプリンガーネイチャーは「Nature Index 2025 Research Leaders」を発表した。

 Nature Indexは、世界トップクラスの研究成果を国・地域、機関別にプロファイリングするデータベースで、第一線で活躍する現役研究者が選んだ科学ジャーナル145誌に掲載された原著論文を収録している。Nature Index Research Leadersは前年に登録された論文データをもとに世界の大学や研究機関、国・地域の研究力をランキング形式で示している。

 2024年に登録された論文データに基づく「Nature Index 2025 Research Leaders」によると、中国は研究論文の発表数において優位性をさらに拡大し、同国のシェア(※1)は32,122に達し、2023年と比べて17%増加した。世界の研究機関ランキングにおいても上位10機関中8機関を占め、中国科学院が首位を維持、中国科学技術大学は3位に上昇、浙江大学は10位から4位に上昇した。

 一方、主要な西欧諸国は、調整後のシェア(※2)が2年連続で減少。カナダ、フランス、スイス、英国、および米国はいずれも少なくとも7%以上の減少を記録した。世界の研究機関ランキングにおいてはドイツのマックス・プランク協会が4位から9位へ後退。フランス国立科学研究センターは初めてトップ10から外れ、13位にとなった。米ハーバード大学は、調整後のシェアは18%の減少を記録したものの、2位を維持。スタンフォード大学とマサチューセッツ工科大学はともに順位を落とした。

 チーフエディターのサイモン・ベーカー氏は「これらのデータは、グローバルな研究情勢における根本的な変化を反映しています。中国の科学技術への継続的な投資は、質の高い研究成果の急速な持続的成長につながっており、物理科学や化学などの分野では、米国を含め、これまで優位を占めていた欧米諸国を大きく上回っています」と話す。

 中国以外のアジアの国でも研究論文の発表数が大幅に増加した。中国を除く上位10カ国の中で、2023年から調整後のシェアが増加したのは、韓国とインドの2か国。韓国は4.1%、インドは2%増加した。韓国は総合ランキングで7位に上昇。シンガポールは18位から16位に上昇し、7%の増加を記録した。これは、中国に次ぐ上位20カ国中で2番目の増加率となる。

 一方、日本は国・地域別ランキングにおいて1位中国、2位米国、3位ドイツ、4位イギリスに次いで5位を維持した。しかし世界の研究機関ランキングトップ100にランクインした日本の研究機関は、23位東京大学(2024年:21位)、京都大学55位(2024年:47位)のみ。2014年にNature Indexが始まって以来、京都大学がトップ50から外れたのは初であり、両大学ともに最も低い順位を記録した。前回70位の大阪大学は今回103位だった。

 なお、東京大学は、フランス国立科学研究センター(フランス)とともに「機関の国際連携」の指標において連携スコアが最も高かった。この指標は異なる国や地域にある2つの機関がNature Indexが追跡する学術誌に少なくとも1件の論文を共同執筆するというもので、両機関が貢献した論文におけるそれぞれのシェアの合計で算出している。

 今回のランキングから新たに追加された指標に「女性著者の割合」がある。日本国内のトップは沖縄科学技術大学院大学で30.2%。世界の研究機関ランキングの上位5機関をみると、ランキング1位の中国科学院(中国) は19.0%、2位のハーバード大学(米国)は38.2%、3位の浙江大学(中国) は17.3%、4位の中国科学技術大学(中国)は13.9%、5位の清華大学(中国)は14.3%だった。

※1 シェア:Nature Indexの対象論文において、特定の拠点の著者による貢献度を測る指標
※2 調整後のシェア:NatureNature Indexに登録された論文総数の年間変動を考慮したパーセンテージ変化の指標

参考記事:【シュプリンガーネイチャー】今年のNature Index Research Leadersで発表されたデータは、世界における研究情勢の変化を示す

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