東京大学大学院工学系研究科の高橋亮特任助教、川原圭博教授、染谷隆夫教授、横田知之准教授らの研究グループは、一度のフル充電で1ヶ月以上動作する超低電力の指輪型無線マウスを、世界で初めて開発した。

 拡張現実(Augmented Reality:AR)を表示する眼鏡型デバイス「ARグラス」の登場により、屋内外を問わず仮想画面を通じたインタラクションが可能になりつつある。これに伴い、 ARグラスと併用して仮想画面を操作できるリストバンド型や指輪型などのウェアラブル入力デバイスが期待されている。

 特に指輪型デバイスは、軽量で目立たず、指の微細な動きも高精度にセンシングできる利点を持つ。一方で、物理的に小さな電池しか搭載できないため、短時間で電池切れを起こすという課題があった。

 そこで本研究では、指輪の近くに装着できるリストバンドをARグラスとの中継器として活用するという新しい発想を導入し、指輪-リストバンド間をつなぐ超低電力の無線通信技術を開発した。

 研究グループが採用した「磁界バックスキャタ通信」は、磁界を反射(バックスキャタ)させて情報を送る無線通信技術であり、非常に低い電力で動作できる。しかし、従来技術では通信距離が1~5cm程度と短く、用途が限られている。

 今回、研究グループは、分散コンデンサを用いた高感度コイルとバランスドブリッジ回路を組み合わせることで、磁界バックスキャタの通信距離を約2.1倍に拡大させた。これにより、指輪-リストバンド間での高感度かつ超低電力な中距離通信を実現した。

 開発された指輪型無線マウス「picoRing mouse」は、従来の通信システムと比べて消費電力を約2%にまで削減し、長時間駆動を可能にしている。本研究の成果は、ARグラスの操作性を飛躍的に向上させるだけでなく、ウェアラブルデバイスにおける超低電力無線通信技術の発展にも寄与すると期待される。

参考:【東京大学】ごくわずかな電力で動く指輪型無線マウスの開発に成功 ―日常空間でARグラスを目立たず半永久的に扱うコントローラに向けて―

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