東京大学大学院の永田宏次教授らの研究グループは、アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社、アサヒビール株式会社との共同研究で、さまざまな食用天然素材の抗菌活性を調べた結果、スパイスの一種であるクローブの抽出物が、ビールの品質を損なう微生物の増殖を抑えることを明らかにした。
ビールは一般にアルコールやホップの働きにより微生物が増えにくい。一方、アルコール濃度が低いほど抗菌作用も弱くなるため、近年需要が急速に拡大しているアルコール・ノンアルコール(No/Lo)飲料は製造・流通過程で微生物が増殖しやすい。安全で、できれば天然由来の方法による品質管理技術の開発が求められていた。
そこで研究グループは、香辛料や植物素材など176種類の食品から抽出液を調製し、ビールに近い環境条件で微生物増殖への影響を調べた。その結果、クローブ[丁子(チョウジ)]の抽出物のみが、4種の代表的なビール汚染微生物すべてに増殖抑制効果を示した。
さらに、この抗菌作用の主因は、クローブに含まれる天然成分のオイゲノールと没食子酸(もっしょくしさん/ぼっしょくしさん)と判明。また、増殖阻害濃度(IC50)を決定し、走査型電子顕微鏡観察と蛍光漏出試験により、これら化合物の作用メガニズムを解析。微生物細胞表面の形態変化、細胞膜や細胞壁の障害を確認した。
今回の成果は、天然食品由来成分がビールの品質維持に利用できる可能性を示した。特にNo/Lo飲料の微生物汚染対策への応用が期待され、また、アルコールや化学保存料に依存していた従来の品質管理に対して、「天然成分による制御」という新しい選択肢を提示するものとしている。

