慶應義塾大学、東京大学大学院、奈良先端科学技術大学院大学を中心とする研究グループは、電子カルテの自由記載を自然言語処理(NLP)で解析し、がん薬物療法に伴う副作用を大規模に把握するとともに、副作用抑制作用を示す既承認薬を探索できる新規手法を構築した。

 研究グループはこれまでに、東京大学医学部附属病院の電子カルテ自由記載から自動的に副作用を抽出するNLP基盤を開発。また、実際の臨床現象を適切に捉えられるかを確認するため、すでに臨床研究で効果が示されている既承認薬を対象に、パイプライン(新薬候補)の妥当性を検証する研究を進めてきた。

 研究グループは今回、電子カルテの自由記載に対して、日本語の医療関連表現に対応したNLPを適用し、がん化学療法に伴う主観的な副作用(口内炎、末梢神経障害など)を、5万6千人規模の患者集団で定量的に評価した。

 その結果、既存の高血圧治療薬であるアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)がフルオロピリミジン系薬による口内炎を抑制し、睡眠薬ラメルテオンが白金製剤による末梢神経障害を抑制する可能性が示された。

 これらの候補薬はいずれも基礎研究で抗がん薬の副作用抑制作用が報告されており、今回の研究により、追加の介入や特別なデータ収集を行わずに、既存の臨床データのみを用いて副作用抑制作用を検証できることが初めて示された。

 この新手法は基礎研究と臨床研究の間のギャップを埋め、がん支持療法研究の加速に貢献するだけでなく、医療機関に蓄積された臨床テキストの利活用価値を明確に示すものとして、医療AIの社会実装や、患者の生活の質(QOL)向上を目指した個別化支持療法の開発につながる可能性があるとしている。

論文情報:【European Journal of Cancer】A scalable natural language processing framework for drug repurposing in chemotherapy- induced adverse events from clinical narrative records

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