2025年には何かが起こる?

下のグラフ(図2)を見てください。携帯やパソコンなどのIT機器の販売の伸びと、リチウムイオン電池の普及の伸びを重ねあわせたものです。1995年、ウィンドウズ95の発表をきっかけに始まったIT革命。それを支えたのがリチウムイオン二次電池でした。

戦後の科学・技術の大きな変革は、まず東京オリンピックが開催された1964年頃に起こりました。工業化学による素材革命です。次がこの30年後のIT革命で、みなさんの生活の、ある意味でベースになるものがこの時から形成されてきました。

歴史が繰り返すなら、次に大きな変革が起こるのは30年後の2025年頃です。ちょうどみなさんが社会の第一線で活躍している頃です。そこからの信号は、今はまだとてもかすかなものかもしれませんが、それをいつ頃どうキャッチするかが、これからみなさんに与えられた大きな課題ではないでしょうか。

大きな変革は30年に一度にしても、その予兆は15年前ぐらいから少しずつ現れます。リチウムイオン電池の場合、理論的な背景を辿れば1964年の福井謙一先生(1918年〜1998年) の『フロンティア軌道理論』に行きつきます※3。その福井先生がノーベル賞を受賞されたのが1981年。そしてその少し前の1977年には、やはりノーベル賞を受賞された白川英樹先生(1936〜)が、リチウムイオン電池の正極材料に大きなヒントを与えたポリアセチレンという材料を発見されました。また最終的に正極材料に使われることになった、リチウムイオン含有金属酸化物LiCoO2、( リチウムコバルトース)をジョン・グッドイナフ(J.B.Goodenough) が発見したのが1980年、いづれも1995年に先立つ15年ほど前です。

私は当時、ビデオカメラを開発中のある家電メーカーの方にこう言われたことがあります。「ビデオカメラの顔や頭脳に当たる部分(LCDやLSI)の開発は進んでいるが、心臓部に当たる二次電池の開発が遅れていますね」と。その時、こんな会話もしていました。「エジソンの時代から使われていた電球、レコード、ニッカド電池は近々すべて変わるだろう」と。リチウムイオン二次電池の基礎研究が完成したのは1985年、事業化が始まったのは1992年でした。

※3:乾電池の原型となるものは1800年頃にあって、その後1900年には、水系の二次電池の原型ができた。非水系の一次電池が出たのが1970年頃で、非水素の二次電池はなかなかできなかった。そんな時に脚光を浴びたのが、化学と電子工学の融合分野を拓いた『フロンティア軌道理論』だった。
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大学ジャーナルオンライン編集部

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