学校選択理由と進路選択についての満足度には関係がある

 

 

今回の21世紀出生児縦断調査は、非常に優れたデータ集にもなっています。例えば、調査対象者には1年前に進学先の希望について調査をしており、希望に対してどのような結果になったかが分かる下記のデータも見ることができます。

1年前の第一志望進路→進学実績
私立大学進学志望→私立大学進学93.3%
国公立大学進学志望→国公立大学進学54.1%(私立大学進学39.3%)
短大・高専進学志望→短大・高専進学93.8%
専修・各種学校進学志望→専修・各種学校進学93.8%
外国の大学進学志望→外国の大学進学48.1%

国公立大学進学志望者を除くと概ね生徒は希望通りの進路に進んだことが分かります。国公立大学を目指す受験生が実際にどれぐらい国公立大学に進学できているのかを示すデータはなかなか見られないため、非常に参考になるデータです。ただ、地域別に見ると状況はかなり異なることも考えられますので、データが使用可能な形で公開されるか、地域別のクロス集計が発表されることが望ましいと言えます。

なお、今回の調査結果では学校選択理由と進路選択についての満足度をクロス集計していますが、満足度の高い順に見ると次のように非常に興味深い結果となっています(回答は、満足、どちらかといえば満足、どちらかといえば不満、不満)。

学校選択理由×現在の進路選択の満足度
1.卒業後の大学院等への進学に有利だから・・・満足と回答55.3%
2.他校よりも入試難易度が高いから・・・満足と回答55.1%
3.学校の雰囲気がよかったから・・・満足と回答54.9%
4.特色ある取組を行っているなど授業内容に興味があったから・・・満足度回答53.8%
5.将来就きたい仕事と関連しているから・・・満足と回答49.9%

回答者には短大、高専、専門学校生も含まれていますが、70%は大学生ですので、ほぼ大学進学者の状況が反映されていると考えられます。卒業後の大学院等への進学に有利だから満足しているという回答は、大学院進学率の高い難関大学に進学したことを示唆していますので、その事についての満足度が影響しているのかも知れません。

ところで、不満と回答した率が高い学校選択理由は次の通りです。やはり自分自身で意志決定を行ったと本人が思っていないと不満が高まるようです。

学校選択理由×現在の進路選択の不満度
1.合格できそうだったから・・・不満と回答7.3%
2.塾・家庭教師の先生にすすめられたから・・・不満と回答3.6%
3.高校の先生にすすめられたから・・・不満と回答2.9%
3.親・親せきにすすめられたから・・・不満と回答2.9%
5.友人が選択していたから・・・不満と回答2.6%

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神戸 悟(教育ジャーナリスト)

教育ジャーナリスト/大学入試ライター・リサーチャー
1985年、河合塾入職後、20年以上にわたり、大学入試情報の収集・発信業務に従事、月刊誌「Guideline」の編集も担当。
2007年に河合塾を退職後、都内大学で合否判定や入試制度設計などの入試業務に従事し、学生募集広報業務も担当。
2015年に大学を退職後、朝日新聞出版「大学ランキング」、河合塾「Guideline」などでライター、エディターを務め、日本経済新聞、毎日新聞系の媒体などにも寄稿。その後、国立研究開発法人を経て、2016年より大学の様々な課題を支援するコンサルティングを行っている。KEIアドバンス(河合塾グループ)で入試データを活用したシミュレーションや市場動向調査等を行うほか、将来構想・中期計画策定、新学部設置、入試制度設計の支援なども行なっている。
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