毎年のように新学部の設置や入試方式・入試科目の変更が行われています。来年の2027年度入試でも多くの大学が新学部を設置したり、入試の仕組みを変更する予定です。その動きは国公私立の設置者を問わず、また難関大でも例外ではありません。特に難関大の新学部設置や入試科目の変更は、近隣の他大学にも影響が及びますので注目点です。現段階で公表されている情報から特徴や影響などについて考えます。

 

主要私大で新学部が多数、他大学への影響も大きい?

 すでの多くの大学が2027年度入試からの新学部の設置や入試方式や入試科目の変更点を公開しています。これらは各大学のサイトを個別に見なくても、まとめて一覧表になった資料などが入試情報サイトで確認できます。特に河合塾が提供する進路・大学入試情報サイトKei-Netと駿台の大学入試情報サイトでの資料が分かりやすくまとまっています。

 河合塾Kei-Netは各大学別にまとめられており、駿台入試情報サイトは国公立大と私立大の一覧表が掲載されています。これらのサイトは当然、情報が重複していますが、それぞれに特徴もあります。河合塾Kei-Netは、総合型・学校推薦型選抜の情報もカバーされており、網羅性が高いことが特徴です。駿台入試情報サイトは一般選抜の変更点が中心で掲載件数がやや限られますが、配点が掲載されていますので入試への影響を考える上で非常に助かります。

 2027年度入試の変更点を私立大学から見ていくと、新学部学科(学環を含む)は数々ありますが主な私立大では、東北学院大学(未来探究科学部)(教育学部)があげられます。東北学院大学は地域内でとても存在感のある私立大ですので、他大学への影響が注目されます。首都圏では青山学院大学(統計データサイエンス学環)が新設されますが、既存の経済学部、社会情報学部との学内併願は発生すると思われますし、加えて、首都圏の中堅私大データサイエンス系学部にとってはこれまで無かった上位併願校ができることになります。これらの中堅私大は合格者のうち上位層が青山学院大学の新学環に流出しますので、合格者の入学率の低下や追加を含む合格者数の増加にともなう入試難易度低下の可能性があります。上智大学(理工-デジタルグリーンテクノロジー学科)は入学定員が50名と少なく約半数が留学生となる予定のため、他大学への影響は少ないと見られます。中央大学(スポーツ情報学部)は、他大学のスポーツ科学系の学部とデータサイエンス系の学部の両方が併願大になると見られますが、メインはスポーツ科学系の学部となると見込まれます。首都圏でスポーツ科学系の学部は増えており、中堅私大では合格者のうちの上位層がこれまで以上に流出することが予想されます。

 首都圏以外では、愛知大学(社会情報学部)、広島修道大学(農学部)は、それぞれの地域内では伝統があり、存在感のある大学ですので、地域全体に影響が及ぶものと考えられます。

<参考>
【河合塾が提供する進路・大学入試情報サイトKei-Net】入試変更に関する資料「2027年度 国公立大入試変更点・2027年度 私立大入試変更点
https://www.keinet.ne.jp/

【駿台 大学入試情報サイト】今後の入試情報「2027年度 国公立大入試変更点一覧・2027年度 主要私立大入試変更点一覧」
https://www2.sundai.ac.jp/nyushi-info/
2027年4月に新設される青山学院大学 統計データサイエンス学環は、青山キャンパスに設置される

注目される慶應義塾大と立命館大の入試変更

 入試方式や入試科目の変更点も多数ありますが、注目されるのは慶應義塾大学(経済学部)が小論文を廃止して、A方式は英・数、B方式は英・地歴のいずれも2教科型になることです。慶應義塾大学はこの入試変更を2024年に公表していましたので、情報は十分に行き渡っていると思いますが、併願大学(学内併願も含め)への影響については直前期になるまで読みづらいと思います。

 今回の入試変更で小論文がなくなったことによって、A方式(英・数)は数学の配点比重が高まっています。あくまでも予想ですが、出願者の理系生の比率は高まるはずです。従来ならば小論文があるために出願してこなかった理系生が流入する可能性が高いと見られるからです。ただ、それがトップレベルの理系生なのか、中堅の理系生なのかによって影響は異なります。また、近年の首都圏難関私大の一般選抜の難化によって、既卒生の受験生が増えていると見られますので、これらの影響もあって、A方式の志願者数は昨年よりも増えると予想されます。ここ2~3年は直前期での受験生の志願動向が読みづらくなっていますが、慶應義塾大学(経済学部)の出願締切日は大学入学共通テストの翌日ですので、本当に直前にならないと影響は分からないのではないでしょうか。
慶應義塾大学三田キャンパス

 このほかでは、立命館大学がUNITE PROGRAM修了者を対象としたAO選抜を拡大します。多くの方はUNITE PROGRAMと聞いてもピンと来ないかも知れません。この入試はAI学習システムで指定の単元などを学習して修得チェックを受けることが出願要件のAO入試です。つまり、入試に学習機会と学習機能が組み込まれているのです。入学前教育と入試を同時に行っていると考えることもできるかも知れません。2023年度入試から実施されていますが、2027年度は新規に実施する学部が3学部あります。着実に成果が出ているから拡大しているのだと推測します。

<参考>
【立命館大学】UNITE Program
https://www.ritsumei.ac.jp/uniteprogram/

国公立大学は年内入試の出願要件の拡大が目立つ

 国公立大学でも変更点は多く、全体を見渡すと新学部設置のほか、大学入学共通テスト「情報」の必須化や点数化、選択科目化が目立ちます。また、一般選抜と総合型・学校推薦型選抜(以下、年内入試)を問わず、面接に代えてペーパーインタビューを導入する大学も少ないながらも目につきます。このペーパーインタビューは長崎大学、岡山大学で早くから実施されており、関連する論文もいくつか出ていますので、ご存じの方も多いかと思います。非常に優れた仕組みのため、今年から入試のルール変更で年内入試では面接が必須化されていますが、ペーパーインタビューを課せば、対面の面接にこだわる必要はないのではないかと思います。

 年内入試で目立つのは、出願要件や出願人数の変更です。出願要件の変更では、学習成績の状況(調査書の評定平均値)の基準を緩和するケースが多く見られます(評定平均値の基準を4.0から3.5にする等)。中には基準を「不問」とする大学もありますが、面接と総合論述が課されていますので、この大学の入試のハードルが下がった訳ではありません。
 出願人数の変更は、1つの高校から出願できる人数が増えるケースがほとんどです。例えば、これまで出願は「1校から2名以内」としていた人数制限を緩和して、「1校から3名」などに拡大する大学がいくつかあります。中には岐阜大学(地域科学部)、京都府立大学(環境科学部森林科学科)、大阪公立大学(理学部物理学科)などのように推薦できる人数の制限をなくした大学もあります。

 また、島根県立大学(管理栄養学部看護学科)のように指定校推薦を導入する大学もあります。国公立大学は指定校推薦を実施していないと思いがちですが、公立大学で指定校推薦を実施している大学は結構な数であります。県立大学が県内の高校、市立大が市内の高校を対象とすることが多いのですが、中には他県の私立高校を対象としている公立大学もあります。周辺の私立大学から見れば困惑以外の何物でもありませんが、高校側からは歓迎されているようです。

 周辺の私立大学への影響という点では、公立大学の入学定員の拡大は受験生にとってはポジティブな情報ですが、同じ地域の私立大学にとってはネガティブな情報なのかも知れません。2027年度入試で目立つところでは、横浜市立大学(データサイエンス学部)が入学定員60名から120名に倍増します。名古屋市立大学(理学部理学科)も再編に伴い入学定員が43名から90名とほぼ倍増です。名古屋市立大はこのほか医学部保健医療学科看護学専攻が、県内の別の場所に新校舎を新設することにも伴って入学定員が120名から210名になります。受験生にとっては朗報です。

神戸 悟(教育ジャーナリスト)

教育ジャーナリスト/大学入試ライター・リサーチャー
1985年、河合塾入職後、20年以上にわたり、大学入試情報の収集・発信業務に従事、月刊誌「Guideline」の編集も担当。
2007年に河合塾を退職後、都内大学で合否判定や入試制度設計などの入試業務に従事し、学生募集広報業務も担当。
2015年に大学を退職後、朝日新聞出版「大学ランキング」、河合塾「Guideline」などでライター、エディターを務め、日本経済新聞、毎日新聞系の媒体などにも寄稿。その後、国立研究開発法人を経て、2016年より大学の様々な課題を支援するコンサルティングを行っている。KEIアドバンス(河合塾グループ)で入試データを活用したシミュレーションや市場動向調査等を行うほか、将来構想・中期計画策定、新学部設置、入試制度設計の支援なども行なっている。
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