世の中には、資格がなければ就けない職業がいくつもある。なかでも国家公務員総合職や公認会計士、法律専門職に就くためには、難関国家試験の合格が必須だ。これらの試験で毎年高い合格率を誇っているのが、明治大学の学生たち。受験対策に特化した国家試験指導センターが学内に設置されていることが、大きな助けとなっている。今回は、国家試験指導センター長の西川伸一教授、国家試験指導センター事務室職員の杉浦哲也さん、そしてOBや現役学生に、明治大学ならではの難関国家試験対策について伺った。

「国家試験に強い明治大学」を作り上げる
明治大学のキャンパス内に設置されている国家試験指導センターは、司法試験、公認会計士試験、国家公務員採用試験といった難関国家試験合格を目指す学生に向けた支援機関だ。国家試験指導センターの傘下には、1948年に日本初の公認会計士養成機関として設立された経理研究所、1957年に発足し日本初の女性判事・裁判所長を輩出した実績もある法制研究所、そして1957年に作られた明治大学行政研究指導室を前身とする行政研究所がある。3つの研究所は学生への支援をさらに強化することを目指し、2007年に国家試験指導センターに統合された。
合格者が増え「明治大学は難関国家試験に強い」というイメージが定着すれば、「大学の知名度もさらに向上するだろう」と西川教授は期待を寄せている。
「2011年度から理系公務員向けの講座を始めたこともあり、とくにここ5年ほどは合格者が大きく伸びています。たとえば行政研究所では、もっとも難しいといわれている国家公務員採用総合職試験の最終合格者が増加しました。試験合格後に官庁から内々定をもらい、採用される学生も増えています」(西川教授)
西川伸一教授(国家試験指導センター長兼行政研究所長)
大学の授業との両立、仲間の存在……国家試験指導センターの強み
難関国家試験では授業で身につける専門性とはまた違ったスキルが求められる。そのため大学と受験予備校に並行して通う学生も多く、大学によっては、公務員志望者向けの受験対策科目を用意しているところもある。しかし明治大学の国家試験指導センター行政研究所では、どちらの方式にも属さない。独立した学びの場を学内に用意し、受験対策のノウハウが豊富なプロの講師が指導を行っている。
「いわゆるダブルスクールですと、授業後に予備校まで移動しなければなりません。しかし国家試験指導センターの各研究所はキャンパス内に設置されているため、移動時間を最低限に抑えられます。また、一般の受験予備校の約半額の費用で受講できるため金銭面の負担も少ないです」(西川教授)
ほかにも講座が17時30分から始まるため日中の授業と両立しやすいことや、空き時間に自由に使える自習スペースが用意されていることなどメリットは多い。西川教授がもっとも大きな利点としてあげたのが、ともに試験に挑む仲間たちの存在だ。試験勉強を走りきった先輩の支えや、励まし合える同期、学びやすい環境作りに協力する教職員など、予備校では難しい「タテとヨコのつながり」が得られる。
「先輩が面接対策をしてくれたり、同期で切磋琢磨したりといったつながりが生まれます。これほどまでに密な人間関係は、受験予備校では味わえないでしょう」(西川教授)
「難関国家試験は、2~3年かけて勉強する長距離マラソンのようなものです。くじけそうになることもありますが、「がんばろう」と励まし合える仲間が国家試験指導センターにはたくさんいます。また、実際に資格試験に合格して官公庁などで働いている卒業生が身近にいるのも、モチベーションにつながるはずです」(杉浦さん)
行政研究所OB・OG会長の中川喜郎さんも、学生時代に仲間のありがたさを感じていたそうだ。
「試験に自信がなかったときも、みなさんに励ましていただきました。だからこそ官公庁就職という目標を叶えられたのだと思います。現在はOB・OG会長として、後輩たちの支援をしていますが、義務感から行っているわけではありません。自分もお世話になりましたし、母校への恩返しのひとつだと思っています」(中川さん)
高橋孝輔さん(法学部法律学科4年。行政研究所で学び、国家総合職試験に合格した。)
時代の変化にもいち早く対応。国家試験指導センターの手厚い支援
国家試験指導センターでは、社会の流れや試験制度の変更にもいち早く対応してきた。マークシートや論述といった従来の受験方法のほか、パソコンで解答を入力する試験に向けた勉強も、必要に応じて取り入れている。
「たとえば司法試験は2026年度から、パソコンで解答を入力する方式に変更されました。試験中、鉛筆は一度も使いません。ほかの試験もデジタル化が進んでいるため、それに合わせて勉強できる環境を整えています」(杉浦さん)
面接対策にも注力している。講師のほか、すでに試験を終えた先輩や、OB・OGが面接練習を行うことも。行政研究所の場合は受験時期が年々早まっていることを踏まえて、1~3年次に記述式の試験対策を、そして4年次は面接対策を中心に行っている。
さらに行政研究所では、国家公務員採用総合職試験合格後を見据えた官公庁でのインターンシップも支援している。国家公務員総合職は試験に合格しただけでは就職できない。官公庁訪問を行い、内々定をもらう必要があるからだ。法学部法律学科4年の高橋孝輔さんは、行政研究所に所属した利点を、試験勉強以外の面でも感じたそうだ。
「官公庁のインターンや説明会の情報をいただけるのはとてもありがたかったです。おかげで関心のある情報をピックアップし、志望先を決められました。インターンでは自分の雰囲気が国家公務員に合っているかどうか、現場ではみなさんがどう働いているのかなどを知れてよかったです。採用後のミスマッチを減らすことにもつながると思いました」(高橋さん)

国家試験指導センターで培われる、学生たちの自主独立性
仲間と支え合いながら、大学と両立して試験勉強を進められる国家試験指導センター。行政研究所では講座の見逃し配信も行っており、やむをえない事情で授業に参加できなかった学生も学びやすい環境が整っている。こうした活動は教職員ではなく、学生主導で行っているそうだ。
「見逃し配信は学生が自主的に始めた試みです。行政研究所には教科係の学生がいて、動画撮影やプリントの管理などを行っています。また、経理研究所ですと、早めに公認会計士試験に合格した3、4年生たちが同級生や後輩を支援しています。ほかにも合宿、先輩を招へいしての座談会など、学生が企画・推進するイベントがたくさんあります」(杉浦さん)
「学習環境をよりよくしようと、学生たち自身が考えて行動してくれるのは、とても嬉しいです。教職員も学生から提案があれば『だめ』とは言わず、実現する方法をともに考えます。とくに新入所生との交流企画は、学生の提案で大きく変わりましたね。以前は先輩と後輩が大勢で集まって顔合わせをするくらいでしたが、アイスブレイクやグループディスカッションをしたいと学生から提案があり、取り入れました」(西川教授)
自分ひとりが得をするのではなく、各研究所の学習環境をさらに向上させようと積極的に動く学生たち。明治大学の建学の精神でもある「権利自由・独立自治」にもとづく自主独立性を、自然と身につけているといえよう。
杉浦哲也さん(国家試験指導センター事務室職員)
「合格者や内々定者が増えてきたのも、明治大学らしさを培った学生を、時代が求めるようになったからではないかと考えています。混沌とした時代に、本学の校歌にもあるような「暁(あけ)の鐘」を打ち鳴らす力が必要とされている。そんな力が、国家試験指導センターでの経験を通して学生一人ひとりに宿っている気がします」(杉浦さん)
「難関国家試験に合格しようとモチベーションを高く持って大学生活を送った学生は、面接でも明治大学らしさを自分にひもづけて話ができます。そうした点もあり、国家試験指導センターで励む学生は明治大学の一員としての自覚が一層強くなるのだと思います」(西川教授)
国家試験指導センターは、2027年度に設立20周年を迎える。年々増加する合格実績はあくまで結果であり、今後も学生たちが学びやすい環境作りに明治大学らしく取り組んでいく。
「各研究所の入所生の裾野をさらに広げたいです。最近は1、2年生への周知はもちろん、附属高校に対しても国家試験指導センターの案内をしています。学生生活の4年間は、あっという間に過ぎてしまうものです。だからこそ目標を持って学生生活を送ることに意味があると思います。難関国家試験突破も、ひとつの目標になるでしょう。受験を支える国家試験指導センターの存在が、本学への入学動機のひとつになると嬉しいです」(西川教授)
明治大学 国家試験指導センター
西川伸一教授
国家試験指導センター長兼行政研究所長。政治経済学部教授で、専門は国家論。
杉浦哲也さん
教務事務部国家試験指導センター事務室で職員として勤務している。
中川喜郎さん
行政研究所第44期生。2004年、政治経済学部卒業。現在は東京都庁で勤務をしながら、行政研究所のOB・OG会長を務めている。
高橋孝輔さん
法学部法律学科4年。行政研究所で学び、国家総合職試験に合格した。卒業後は総合職として霞ヶ関での活躍が期待されている。
