情報通信研究機構セキュリティ基盤研究室と筑波大学の研究チームは、三重大学の山田芳司教授の協力のもと、医療データを暗号化したまま解析することに成功し、2016年に開発した暗号方式「まぜるな危険準同型暗号※」の性能を実証した。

 2017年に医療ビッグデータ法が整備されるなど、医療データを治療法や診断方法の開発に役立てる動きが加速している。その際のプライバシー保護と情報漏洩を防ぐための安全対策については、暗号化したままデータに関する演算が可能なプライバシー保護データ解析の研究が進められている。しかし医療データを暗号化すると、解析対象のデータかどうか判定することができず、対象外のデータが統計処理に使用された場合でも解析がそのまま行われ、誤った統計値が出力される懸念もある。また、解析前に一度暗号文を元のデータに復号し、解析対象データであることを確認する場合、データ解析を行う第三者にデータの内容を開示する必要があり、プライバシー上の懸念事項にもなっている。

 そこで今回、研究チームは、2016年に開発した誤データ混入防止機能を持つ準同型暗号方式「まぜるな危険準同型暗号」の性能を実証する実験を行った。実証実験では、実際の病気の罹患情報と遺伝情報を解析対象データとした。病院が病気の有無に関するデータを暗号化し、遺伝情報を管理する検査機関に暗号文を送付、検査機関が遺伝情報との統計的な関連性を計算することを想定。

 実験の結果、4,500名程度の暗号化された医療データに対し1分弱で解析した。病気の罹患情報と個人の遺伝情報との統計的な関連性を、各個人の病気の有無や遺伝情報を知ることなく、安全性を確保したままで解析することができた。また、解析中にデータの中身を見ることが許されない医療データに対し、解析対象外のデータが混在した場合でも高速に検出することができ、その解析結果が正当であることを暗号理論的に証明できた。

 今後、「まぜるな危険準同型暗号」の技術により、医療分野において、個人のプライバシーを保護して情報漏えいを防ぎながら、医療ビッグデータが安全に利活用できるようになり、新たな診断方法や治療法の開発につながることが期待される。

参考:【筑波大学】 プライバシーを保護したまま医療データを解析する暗号方式を実証 ~中身を見なくても誤データ混入防止、医療ビッグデータの安全な利活用へ~

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筑波大学は1872(明治)年に開校されたわが国初の師範学校が始まりです。その後、昭和48年に移転を機に東京教育大学から筑波大学へと変わりました。現在の教育体制は9学群、23学類ですが、学生は枠組みを超えて講義を受けることができ、創造的な知性と豊かな人間性を備え[…]

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大学ジャーナルオンライン編集部

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