大阪公立大学の研究グループは、抗がん剤シスプラチンによる吐き気の発生メカニズムについて、従来関与が知られてきたセロトニン3受容体(5-HT3受容体)とは異なる、GDF15という分子が関与している可能性を明らかにした。

 抗がん剤の一つであるシスプラチンは、副作用として強い吐き気を引き起こすことが大きな課題となっている。抗がん剤に伴う嘔吐には既に5-HT3受容体の関与が知られているものの、5-HT3受容体拮抗薬を投与しても吐き気は十分に抑えきれないことがあるという。

 一方、がんや妊娠時に血中濃度が上昇するストレス応答サイトカインGDF15は、食欲不振への関与が注目されている。そこで本研究では、GDF15に着目し、シスプラチンによる吐き気の新たなメカニズムを検証した。

 マウスでは嘔吐が起こらないため、これまでモデル動物で吐き気を直接評価することは難しかった。この課題を克服するため、研究グループは、摂食量、体重、活動量の変化に加え、パイカ行動(本来は食べないカオリンという物質を摂取する行動)や、味に対する嫌悪学習(体調不良と結びついた味を避けるようになる学習現象)を組み合わせ、マウスの吐き気を多角的に評価する手法を確立した。

 この方法を用いて5-HT3受容体欠損マウスの行動変化を調べたところ、シスプラチン投与後は通常のマウスと同様に、摂食量低下、体重減少、活動量低下、パイカ行動の増加、味に対する嫌悪学習が確認された。また、GDF15については、5-HT3受容体欠損マウスと通常マウスのいずれも、シスプラチン投与後に血中濃度の上昇が確認された。さらに、吐き気に関わる脳部位(最後野や孤束核)の活性化も認められた。

 これらの結果から、シスプラチンによる吐き気は、5-HT3受容体ではなくGDF15を介した新たな仕組みによって引き起こされる可能性が示唆された。

 本研究成果は、抗がん剤治療に伴う吐き気の新たな発生メカニズムを見出したことで、従来とは異なる視点から吐き気の予防法や治療薬の開発につながることが期待される。

論文情報:【Biochemical and Biophysical Research Communications】Integrated behavioral and biological assessment reveals 5-HT3 receptor-independent nausea/malaise-like responses in cisplatin-treated mice

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