慶應義塾大学医学部感染制御センター・長谷川直樹教授、医学部内科学・南宮湖助教らは、結核予防会、国立感染症研究所との共同研究により、肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)の国内における罹患率が7年前と比較して2.6倍と急激な勢いで増加していることを報告。国際学術誌「Emerging Infectious Diseases」に発表した。

 結核とよく似た症状を見せる「肺NTM症」。結核との大きな違いは、ヒトからヒトへは感染せず、進行は緩やかであるが抗菌薬による治療が有効ではない点にある。結核の減少と対照的に発症者は増加しており、有効な治療が現状ないことから重症となるケースも多い。しかしその疫学調査は2007年以後実施されておらず、近年の肺NTM症の実態はわかっていなかった。

 今回は884施設を対象にアンケート調査を実施。2014年1月~3月までの肺NTM症および結核の新規診断数について記入してもらい、結核の罹患率と比較することで、肺NTM症の罹患率を算出した。

 その結果、肺NTM症の推定罹患率は14.7人/10万人年。2007年の全国調査と比較して約2.6倍と急激に上昇しており、患者数は肺結核を超えることが明らかとなった。特に肺NTM症の中で難治性の肺Mycobacterium abscessus症は、2007年から約5倍と大幅な増加を見せており、今後の対策が急務であるとされる。さらに今回の調査で、日本は世界の中でも肺NTM症罹患率が最も高いことも判明した。
増加の原因として、医療従事者の中での認知度向上や検診機会の増加、高齢化などが考えられるがはっきりしておらず、今後さらなる研究を進める必要がある。

 結核は、その多くが治すことのできるものとなったが、肺NTM症には有効な治療法はまだなく、有病率は結核を超えると予想される。また今後社会に及ぼす影響は大きいことが予想され、有病率を含めた肺NTM症の詳細な実態把握や対策を講じることが今後の課題となる。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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