岡山大学の辻憲二助教の研究グループは、ラットの腎臓細胞から作った「ミニ腎臓(腎臓オルガノイド)」を使って、薬が腎臓に与える影響を評価する手法を開発した。

 小林製薬株式会社の「紅麹コレステヘルプ」などのサプリメントを摂取した人が腎障害を発症した問題で、これまでの調査では、「紅麹コレステヘルプ」の摂取により腎臓の尿細管が傷ついたり炎症を起こしたりする可能性が指摘されている。しかし、詳しい原因はまだ明らかとなっておらず、今回、迅速かつ正確に評価する手法として、ヒトの腎臓の構造を試験管内で再現した「ミニ腎臓」を使って、「紅麹コレステヘルプ」が腎臓に与える影響を調べた。

 ミニ腎臓に、健康被害が報告された製品ロットの「紅麹コレステヘルプ」を加えたところ、尿細管の細胞壁の菲薄化、管腔構造の断裂、管腔内への壊死細胞の蓄積などの変化が見られた。これは、腎臓に強い毒性を持つ抗がん剤「シスプラチン」を加えたときと同じようなダメージである。この結果から、特定の製品ロットの「紅麹コレステヘルプ」は、ミニ腎臓に対して毒性を持つことが確認された。このサプリメントに含まれる成分が、腎臓の細胞を直接傷つけ、腎障害を引き起こした可能性が考えられるとしている。

 今後は、被害情報のあるロットにおいて検出が報告されている化合物「プベルル酸」を用いた解析を進めることで、腎障害の原因のさらなる解明につながる可能性がある。

 また、本評価法の研究が進めば、動物実験を行わずに食品や薬の安全性を評価できるようになることが期待される。動物を大切にするため、近年広がりつつある「3R」(動物実験を減らす:Reduction、代わりの方法を使う:Replacement、より負担の少ない方法に改善する:Refinement)の観点からも、実用化が期待される成果である。

論文情報:【American Journal of Nephrology】Supplement-induced acute kidney injury reproduced in kidney organoids

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