近畿大学の研究グループは、国内の多数の糖尿病専門施設が参加する1型糖尿病の多施設共同前向き研究「TIDE-J(Japanese type 1 diabetes database)」において、日本人の1型糖尿病ではインスリン分泌が枯渇するまでの臨床経過に個人差があることを明らかにした。

 1型糖尿病は、発症時には一部残存しているインスリン分泌が完全に枯渇するまでの期間に応じて、「急性発症」、「緩徐進行」、「劇症」の3つのサブタイプに分類される、これまで、欧米では「劇症」の報告がほとんどないこと、日本人は欧米人と比べて完全枯渇の頻度が高いことなど、日本人特有の1型糖尿病の病態が示唆されてきた。しかし、インスリン分泌が低下していく自然経過を長期に追跡した研究はなく、詳細な実態は不明だった。

 本研究では、3つのサブタイプが完全枯渇に至るまでの経過を最長14年間にわたって追跡調査した結果、それぞれのサブタイプの中にも個人差があることを確認した。日本人急性発症1型糖尿病では、発症から10年で7割以上の患者が枯渇(血中インスリン濃度が測定限界以下)に至るが、同じ急性発症のなかでもインスリンが急速に低下する症例、緩徐に低下する症例、その中間に当たる症例に分かれることが判明したという。

 そこで、インスリン枯渇速度に関わる因子を解析した結果、1型糖尿病の発症率に関連するHLA遺伝子型の違いが、発症後のインスリン分泌の枯渇速度にも関連していることがわかった。また、緩徐進行の場合は、BMIや自己抗体といった臨床因子も枯渇速度に影響することを見出した。

 このことから、サブタイプとHLA遺伝子型、臨床指標の組み合わせにより、インスリン分泌低下の速度を予測できることが示唆されたとしている。この成果は、リスクが高い患者への早期介入と治療方針の検討に役立つことが期待される。

論文情報:【Diabetes Care】Rapid and slow progressors toward β-cell depletion and their predictors in type 1 diabetes: Prospective longitudinal study in Japanese type 1 diabetes(TIDE-J)

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