滋賀大学データサイエンス学部の青木高明准教授、香川大学大学院地域マネジメント研究科の長町康平准教授、島根哲哉准教授の研究グループは、実際の移住データをもとに、市区町村の「住みやすさ」を定量化する新しい手法を開発した。

 日本では人口減少が深刻化しており、多くの地方自治体が消滅の危機に直面している。この脅威に対抗するため、各自治体は「住みやすい都市」を目指した移住促進政策を進めているが、「住みやすさ」の定義は曖昧であり、政策効果を客観的に測る指標が不足していた。

 本研究ではこの問題に対し、アメリカの経済学者チャールズ・ティブーが提唱した「足による投票」(人々の移住行動が都市の住みやすさを反映するとみなす概念)、すなわち移住人数のデータに、組み合わせホッジ理論という数学的フレームワークを導入した。これにより、定量的な住みやすさ指標「ポテンシャル」を算出することを可能にした。ポテンシャルは移住者を引き付ける力を表し、ポテンシャルが低い都市から高い都市へと移住が生まれる傾向を示す。

 この手法を用いて、子育て世帯と若年女性(20~39歳)を対象としたケーススタディを実施した結果、子育て世帯は郊外地域に、若年女性は都市部に高いポテンシャルを示し、両者が異なる「住みやすさ」の選好を持つことが明らかになった。一方で、文京区・練馬区・つくば市・藤沢市などは、両グループにとって魅力的な都市であることもわかった。

 さらに、通勤時間、人口密度、住宅環境など住みやすさポテンシャルに影響を与える因子を検証したところ、両グループには明確な違いがあることも判明した。この結果は、人々が居住地に関して時に相反する好みを持ち、「万人受けする住みやすい自治体」は存在しないことを示唆している。各自治体は、ターゲットとする人口層を明確にした上で、交通・住居・公共サービスなどの政策立案を進めることが求められる。

論文情報:【npj Urban Sustainability】Learning about the liveability of cities from young migrants using the combinatorial Hodge theory approach

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