東京都立産業技術研究センター(都産技研)と北里大学の研究グループは、「細胞性ウナギ肉」の実現につながるニホンウナギの脂肪細胞株の樹立に成功した。

 動物や魚から採取した細胞を培養して食肉・魚肉に利用する「細胞性食品(培養肉)」は、環境負荷の軽減や動物福祉の観点から近年注目を集める食料生産技術である。しかし、魚類における研究はまだ限られており、特に風味や食感に直結する“脂”をつくる魚類由来の脂肪細胞株が樹立された例はなかった。

 本研究グループはこれまでに、ニホンウナギの筋肉をつくるための筋肉細胞株を樹立している。ニホンウナギは絶滅危惧種に指定され、資源量減少や価格高騰が深刻な問題となっていることから、「細胞性ウナギ肉」の開発は大きな意義をもつ。

 今回の研究では、ニホンウナギ稚魚の筋肉組織から取り出した細胞を長期間にわたり分離・培養し、3種類の新たな細胞株を樹立した。解析の結果、これらは脂肪細胞に分化する前段階の「脂肪前駆細胞株」であることが明らかになった。

 さらに、これらの細胞株は120回以上の細胞分裂後も連続培養が可能で、人為的な遺伝子操作なしに無限増殖能を獲得した「自然不死化細胞株」であることもわかった。

 脂肪前駆細胞株を成熟した脂肪細胞へ分化させると、細胞内に大量に脂肪滴が蓄積され、その脂の組成は市販の養殖ニホンウナギ肉の脂に非常に近いことも確認された。

 今後、すでに開発している筋肉細胞株と組み合わせることで、より本物に近い脂ののった「細胞性ウナギ肉」の実現に大きく近づくと期待される。本成果が社会実装に進めば、絶滅が危ぶまれるニホンウナギの資源保護と、持続可能な食料生産に貢献すると考えられる。

 将来的には、天然物では難しい「脂ののり具合の最適化」や「品質の均一化」など、培養ならではの新たな研究開発へ展開する可能性も示されている。

論文情報:【npj Science of Food】Establishment of spontaneously immortalized Japanese eel muscle-derived preadipocyte cell lines for cultured seafood production

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