ビタミンKにフェロトーシス(脂質酸化細胞死)を強力に防ぐ作用があることがわかった。東北大学とドイツ・ヘルムホルツセンターミュンヘンとの国際共同研究グループが突き止めた。

 フェロトーシスは2012年に新たに提唱された細胞死の型の一つであり、近年ではアルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患や虚血再灌流時の臓器障害、がん細胞に対する抗がん薬の感受性などに関与することが明らかとなっている。これらの病気の治療薬の標的となることが期待され、世界的に注目を浴びている生命事象の一つである。

 本研究グループは、フェロトーシスを抑える作用を有するビタミン化合物を探索していたところ、これまでにフェロトーシスを抑える生体内の抗酸化物質として知られてきたビタミンEだけでなく、ビタミンKにもフェロトーシスを抑える作用があることを見出した。特に、ビタミンK2(メナキノン-4)はビタミンEよりも低い濃度で効果を示し、フェロトーシスによる肝障害や腎障害を引き起こすマウスに投与することで臓器障害が軽減された。

 ビタミンKがフェロトーシスを防ぐ機序としては、還元型のビタミンKが強い抗酸化物質として働くことで、脂質の酸化を抑える経路が明らかとなった。同時に、そのビタミンKを還元する酵素は、これまでコエンザイムQ10の還元酵素として知られていたFSP1であることも判明した。ビタミンKを還元する酵素は50年来、正体が不明だったことから、これを同定したことも重要な発見である。

 本研究成果は、フェロトーシスが関わる様々な病気に対して、ビタミンK のフェロトーシスを防ぐ作用に基づいた新たな治療法の治療薬の開発や応用への糸口となることが期待される。

論文情報:【Nature】A non-canonical vitamin K cycle is a potent ferroptosis suppressor

東北大学

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